『マンション修繕の割高(75万~100万円・最多31%)に注意』~国交省調査~
マンションの大規模修繕工事の際、割高な代金で契約させられるなどトラブルが相次いでいることから国土交通省は各地の工事を調査し、5月11日に結果を公表した。調査対象は過去3年間に施工された944事例で、1戸当あたり「75万~100万円」31%で最も多く、「100万~125万」が25%、「50万~75万」が14%と続いた。(下に第34面記事=リベート横行)
同省のこうした調査は初めて。費用の目安を情報提供し、トラブルを未然に防ぐ狙いがある。分譲マンションは全国に630万戸(2016年)あり、約1500万が入居。大規模修繕な修繕工事はマンションの老朽化に伴い、住民による積立金を元に行われる。
同省は昨年5~7月、工事の実績が多いとみられる建築事務所や設計コンサルタントにアンケートを実施。回答が得られた134社の944事例を分析した。その結果、大規模な修繕は1回目が築13から16年前後で行われ、1戸あたりの平均は100万円。2回目は築26~33年前後で同97万9千円、3回目以降は築37年~45年前後で同80万9千円だった。
修繕工事はそれぞれの状況が異なり、相場が分かりにくいほか、マンションの管理組合と施行会社の間を取り持つコンサルタントの一部で、工事費を不適切につり上げるケースもあるという。国交省は昨年1月、悪質な例を紹介して管理組合に注意を促し、今回の調査に乗り出した経緯がある。
調査結果は同省のホームページで公開。マンションの規模ごとに概況を掲載している。また、事前に検討した方がいいポイントとして、▽過剰な工事項目・仕様などがないか▽戸あたり、床面積あたりの工事金額が割高ではないかーーなどを挙げている。
【管理組合自ら監視を】
住宅問題に詳しい吉岡和弘弁護士の話
大規模修繕工事では、事前に聞き出した積立金の額に合わせて見積もるなど、適正さが疑われるケースが多い。問題は設計コンサルだけではなく、マンションの管理会社でも知り合いの工事業者を使って高く見積もるケースがある。工事が適正か管理組合や住民が自ら監視していける手法を身に着けるのが大切だ。(以上、第1面の記事)
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「リベート横行 膨らむ費用」~マンション修繕コンサル、業者に要求~(以下、34面記事)
マンションの大規模修繕工事をめぐり、国土交通省が初の調査を明らかにした。
「相場」を示して管理組合に役立ててもらうほか、工事業者らにリベートを要求し、代金をつり上げるなど、一部の設計コンサルタントの行為に警鐘を鳴らす狙いもある。
大規模修繕をめぐる問題は、「マンションリフォーム技術協会」が一昨年、会報誌で訴え、注目されるようになった。国交省も昨年1月、同様の指摘をした際、「コンサルが自社にマージンを支払う施工会社が受注できるよう不適切な工作をして、管理組合に損失を及ぼしている」などの例を挙げた。
「何でこんなに高いのだろう」。横浜市内の大型団地で管理組合理事長を務める加藤統久さん(60)は3年前、修繕工事の見積書を見て疑問に思った。 事前の調べでは6億5千万円程度で済むと思っていたが、計10社から上がってきた見積もりは7億~9億円。確認すると、避難用はしごなど複数の設備で相場の倍の値段が計上されていた。落札する業者が決まっていて、費用をつり上げているのではーー。そんな疑問を胸に契約していたコンサルに質問を重ねたが、何を聞いてもはぐらかされた。数カ月後、200万余りの着手金を支払って解約。別のコンサルに頼むと当初の予想に近い金額で工事ができた。
設計事務所「シーアイピー」(東京)の須藤桂一代表によると、悪質なコンサルタントの手口はこうだ。 まず、安い料金を示して管理組合と契約。次に工事の受注業者を事前に決め、管理組合から聞き出した金額で見積もりを提出させる。そして、コンサルは受注業者からリベートを受け取るーー。「修繕工事の多くでリベートのやり取りがあり、工事費が膨れあがっているのではないか」と須藤氏はみる。
こうした不透明な取引は実際に散見される。関西の工事業者は20年間で手がけた100件近い修繕工事のすべてでリベートを支払ったと明かす。「払わないと、そのコンサルから仕事をもらえなくなる」 過大な見積もりを防ぐためにどうすればいいのか。須藤氏は「コンサルタントに業者の選定を任せないことが一番」とした上で、「管理組合もしっかりと情報を集め、工事の工程ごとに分割して見積もりを出させるなど工夫することが大切」と話している。
★大規模修繕工事に関する相談窓口
・公益財団法人「住宅リフォーム・紛争処理支援センター」(0570・016・100)
・公益財団法人「マンション管理センター」(03・3222・1519)
(朝日新聞・平成30年5月12日付け朝刊:第1面及び第34面に掲載記事より)