投稿日:2017年02月07日 作成者:右田 順久 (3782 ヒット)
大規模修繕工事における「設計・監理方式」で、設計コンサルタントが管理組合の利益と相反する立場につくケースが報告されているとして国土交通省は1月27日、担当課長名義で関係団体に通知した。大規模修繕でトラブルや疑問が生じたときは、公益財団法人マンション管理センターなどの相談窓口の活用を周知するよう求めた。
通知名は「設計コンサルタントを活用したマンションの大規模修繕工事等の相談窓口の周知について」。住宅局市街地建築課長、土地・建設産業局建設市場整備課長名で出した。通知では、大規模修繕工事における「設計・監理方式」は、「適切な情報を基に透明な形で施工会社の選考を進めていくためにも有効であるとされています」とする一方、「管理組合の利益と相反する立場にたつ設計コンサルタントの存在が指摘されています」と具体例を示した。<下記※①を参照>
その上で昨年3月に改正されたマンション管理適正化指針で「工事の発注等は利益相反等に注意して行われる必要がある」旨が管理組合の留意事項に盛り込まれた点に言及。設計・監理方式を採用する場合は「設計コンサルタントが利益相反行為を起さない中立的立場を保つ形で施工会社の選定が公正に行われるよう注意する必要がある」とし、管理組合の取り組み例を示した。 <下記※②を参照>
相談先には公益財団法人マンション管理センター、同・住宅リフォーム・紛争解決センターを挙げている。
一方、建設労働者の社会保険未加入問題を受け、現在業界が契約見積もりに適正な法定福利費の計上と発注者の理解に取り組んでいる現況に触れ、マンションの大規模修繕工事の発注に際しても、適切な法定福利相当を含んだ額で契約を結ぶよう求めている。
通知は一般社団法人マンション管理業協会、同・日本マンション管理士会連合会、公益財団法人マンション管理センター、NPO法人全国マンション管理組合連合会宛て。通知で示した事例は、同省・マンション政策室が実施した工事発注に関するヒアリングで得られた証言等を引用した。
(マンション管理新聞:平成29年2月5日付)
◆◆◆◆◆
※①指摘されている事例
・最も安価な見積金額を提示したコンサルタント業務を依頼したが、実際に調査診断・設計等を行っていたのは同コンサルタントの職員でなく、施工 会社の社員であったことが発覚した。コンサルタント(実際には施工会社の社員)の施工会社選定支援により同施工会社が内定していたが、発覚が契約前だったため、契約は見送られた。なお、同コンサルタンとのパンフレットには技術者が多数所属していると書かれていたが、実質的には技術者でない社長と事務員1人だけの会社であった。
・設計会社が、施工会社の候補5社のうち特定の1社の見積もりが低くなるよう、同社にだけ少ない数量の工事を伝え、当該1社が施工会社として内定したが、契約前に当該事実が発覚したため、管理組合が同設計会社に説明を求めると、当該設計会社は業務の辞退を申し出た。このため、別の設計事務所と契約したところ、辞退した設計会社の作成していた工事項目や仕様書に多数の問題点が発覚し、全ての書類を作り直すこととなった。
・一部のコンサルタントが、自社にバックマージンを支払う施工会社が受注できるように不適切な工作を行い、割高な工事費や、過剰な工事項目・仕様の設定等に基づく発注等を誘導するため、格安のコンサルタント料金で受託し、結果として、管理組合に経済的な損失を及ぼす事態が発生している。
※②取り組み事例
○利益相反的な提案をしてきた設計会社を除外して選定した事例
・管理会社において、公開資料に記載の実績等を基に3社に見積もりを依頼し、設計会社を決定。3社のうち2社は、設計費は安価だったものの、工事とセットでの契約が条件となっており、かえって高額になるため、選定されなかったもの。 管理組合において、新聞・雑誌・経験上の知識等の情報を基に15社に見積もりを依頼し、うち7社から見積もりが提出され、金額・内容・実績等を勘案し、上位2社に絞り込んだ。工事項目の絞り込みなど工事費の削減に向けた提案を行った施工会社を管理組合が決定。
○施工会社を公募など透明な形で募集し、理事会における投票・審議など公正な手続きの下で決定した事例。
・設計会社は、公募および紹介に基づく13社のうち、5社に関して管理組合の担当役員が個別面談を行い、予算超過であった最高値の会社と、設計業務を十分に行えないと考えられる額であった最安値の会社を除外し、3社に絞り込み、組合員で設計に詳しい者と相談しつつ、理事会の過半数賛成となるまで、理事会投票を数次重ね決定。施工会社は、管理組合からゼネコン6社に提案を依頼し、書類審査により3社に絞り込み、理事会投票を数次重ね決定。
・設計会社は、管理組合において、従前から理事会のアドバイザーに就任していたマンション管理士の協力を得ながら、管理組合団体や他の管理組合からの紹介に基づき候補5社を選定し、提出された見積金額・実績・会社規模等を勘案して1社に絞り込み、定期総会で承認。施工会社は、専門紙で公募し、5社に現場を案内した上で、見積金額・実績・工事内容・会社規模・アフターケア等を勘案して管理組合の担当役員が1社に絞り込み、臨時総会で承認。
投稿日:2017年01月18日 作成者:右田 順久 (1697 ヒット)
小池百合子東京都知事が策定を表明した「2020年に向けた実行プラン」が12月22日、知事の定例会見で発表された。17年度から20年度までの4ヵ年計画で、500に及ぶ政策目標を掲げている。
住宅の耐震化促進では、耐震アドバイザーの派遣や耐震診断・改修助成等の支援」を強化し、旧耐震基準マンション耐震化を促す。20年度までに住宅全体の耐震化率95%以上を目標にする。特定緊急輸送道路沿道建築物は19年度までに耐震化率90%、25年度までに100%を目指す。
分譲マンションの維持管理にも触れた。管理組合による適切な管理が行われるよう、都が作成している『マンション管理ガイドライン』を改定・周知するなどした普及開発を実施したり、管理状況の実態把握や個々の状況に応じた支援を区市等と連携して推進する。
老朽化マンション対策では、改修・建て替え・建物と敷地の一括売却等の再生手法の中から、管理組合が適切な選択を行えるよう専門家とも連携して、マンション再生の普及啓発や支援を行う。街づくりと連携して建て替え等を円滑化する仕組みとして「マンション再生街づくり精度」(仮称)の創設も提唱。17年度以降に制度を開始し、20年度までに6地区の指定を行う。管理不全の予防・改善のための登録・報告制度も設ける。20年度までの創設・実施を目指す。同プランに盛り込まれた施策は都が昨年発表した「良質なマンションストックの形成促進計画」や「耐震改修促進計画」に提示されたものとほぼ同様。
(マンション管理新聞:平成29年1月15日付)
投稿日:2016年12月07日 作成者:右田 順久 (2543 ヒット)
個人情報保護委員会は11月30日、改正個人情報保護法のガイドラインを発表した。パブリックコメントでは管理組合の位置づけや対応の確認を求める声が寄せられた。同委員会事務局は管理組合を同法上の「中小規模事業者」とする見方を示しつつ、今後作成する「解説資料等」の中で具体的な考えを明らかにする意向を示した。同法は来春ごろ全面施行の予定。
◇
ガイドライン(通則編)のパブコメで、管理組合の扱い等に関する意見は一般社団法人日本マンション管理士会連合会や三井不動産レジデンシャルサービスなどから計5件が寄せられた。
同委員会は考えとして「管理組合が個人情報データベース等を事業の用に供していれば個人情報取扱事業者」と指摘。管理組合の理事等が100名以下で、取り扱う個人の数が過去6月以内のいずれの日でも5000を超えない場合「中小規模事業者」に該当する、と示した。総会等の委任状取得の際は「利用目的が明らかなのため、必ずしも利用目的の明示は必要ない」としている。
中小規模事業者は安全管理の緩和措置が認められており、ガイドライン(通則編)で組織的・人的・物理的・技術分野的の安全管理措置を例示している。ただ、パブコメには「マンション管理業者に全面的に個人情報管理を委託しているケース」など、管理組合向けに別途の配慮を求める意見も寄せられた。同委員会ではこうした意見を踏まえ、今後「解説資料等の作成」という形で対応する考えだ。
(マンション管理新聞:平成28年12月5日付)
投稿日:2016年11月18日 作成者:右田 順久 (1777 ヒット)
国土交通は11月11日、特区民泊を許容又は禁止する場合の管理規約上の規約例を発表し、関係自治体・団体に通知した。
管理組合に規約で特区民泊実施の可否を明示してもらうことで、認定等の円滑化を図りたい考え。
来年の通常国会提出予定の民泊新法についても、新法施行に合わせ類似の規定を示す方針だ。
◇
表記は専有部分の用途を「専ら住宅」使用に限定している標準管理規約第12条準拠を想定し、第2項に可否の規定を設ける形。許容、禁止、使用細則明示の3パターンを例示し、いずれも対象は特区民泊利用限定。使用細則自体の例示はない。
10月31日施行の改正国家戦略特区法施行令では、特区民泊の連泊期間は6泊7日以上から2泊3日以上に緩和。
一方、認定申請前に事業予定者によるマンション住民等への説明等は義務付けとなっている。
規約改正の必要性は特区民泊が実施可能な区域外では直接関係なく、区域内でも事業予定者による申請前の説明が行われるが、同省では「必要に応じ、あらかじめ管理組合で議論の上、管理規約等において方針を告知しておくことが望まれる」としている。
特区民泊に関する規約案は9月16日の国家戦略特区のワーキンググループで議論され、「特区民泊は現区規約でも可能」を持論とする八田達郎座長らは挙用の規定新設案に難色を示していた。今回の可否併記に関し「規約解釈で神学論争するのを避け、円滑な運営のためにという趣旨で了解して貰った。民泊新法の際も、同様の規定を例示する見込み」(マンション政策室)と話す。
また2泊3日以上の特区民泊に関する技術的助言の通知では、共同住宅の住居出口部分に非常用照明装置の設置等により、該当住戸を建築基準法上の「住宅」とみなし、住居専用地域での実施も可能としている。
(マンション管理新聞:平成28年11月15日付)
投稿日:2016年10月27日 作成者:右田 順久 (1658 ヒット)
空き部屋に旅行者を有料で泊める「民泊」の広がりを受け、国土交通省はマンションの管理規約に民泊の受け入れの可否を明示するよう促すことを決めた。規約の文案をつくり、近く業界団体などに通知する。民泊ではゴミ出しや騒音を巡るトラブルも多いことから、あらかじめ規約で可否を決めておく必要があると判断した。
日本を訪れる外国人観光客が増え、宿泊施設が不足しているため、政府は民泊を国家戦略特区で旅館業法の適用外として認めることにした。今年2月から運用が始まり、東京都大田区と大阪府の大東市など4市で今月11日まで28施設が参加、利用者は297人となっている。
政府は来年の通常国会に、全国で民泊を認めた新法案を提出する方針だ。
だが、多くのマンション管理組合がひな型として使っている国交省作成の「標準管理規約」には民泊に関する記載はない。
国交省は、部屋を「民泊に使用できる」「できない」の2通りの管理規約の文案を作成。近くマンション管理や不動産の団体、全国の自治体に通知し、規約で可否の明示を求めることにした。特区内のマンションを販売する不動案会社にも、民泊を認める物件か明示することも求めていく方針だ。
(朝日新聞・平成28年10月27日付(朝刊))
投稿日:2016年09月15日 作成者:右田 順久 (2350 ヒット)
改正個人情報保護法の全面施行まで、およそあと1年。「個人情報取扱事業者」の要件から取り扱い量の規定が削除され、数に関係なく組合員名簿や居住者名簿、要援護者名簿などの個人情報を扱う管理組合は全て「個人情報取扱事業者」になる。同法所管の個人情報保護委員会は今秋以降、中小規模事業者向けのガイドライン案を公表し、安全管理措置の特例的な対応を例示する方針。管理組合等の対応方法についても、Q&A等の形式を含め示す考えだ。
【個人情報保護委員会 ガイドラインで対応提示へ】
昨年9月9日公布の同改正法で、個人情報の取り扱い量が少ない事業者を適用除外としていた規定(第2条3項5号)が廃止された。それに伴い、過去6カ月以内に5000人以下という人数要件を設けていた施行令改正の政令案が公表された。 法令は公布から2年以内、来年9月9日までに全面施行される。
「個人情報取扱事業者」とは、個人情報をデータべース化して事業活動に利用している者。法人や営利・非営利の区別はなく、データベースには名簿も含まれる。管理組合員、居住者、要援護者等の名簿を作成している管理組合、自治会・町内会・防災会等の団体も法の適用対象担になる形で、個人情報保護委員会は「管理組合や自治会も『個人情報取扱事業者』になる」と指摘する。これまで情報取り扱い量が5000人以下の場合は、「適用除外」の扱いを受けてきたが、このルールが廃されたため、管理組合は全て「個人情報取扱事業者」になる、というわけだ。
「個人情報取扱事業者」は、取得した個人情報をどんな目的で使用するのかできる限り特定し、正確かつ最新の内容に保つよう努めたり、データの漏えいや毀損の防止など安全管理について必要な措置を講じなければならない、といった義務を負う。違反行為に対する直接の罰則はないが、主務大臣の命令や勧告に従わない場合は6月以下の懲役や罰金刑に処せられることになっている。
管理組合等はどう対応すべきか。法の改正以前から同法の趣旨を踏まえ、公益財団法人マンションん管理センターは昨年1月、『マンション管理規組合で作成する名簿の取り扱いに関する細則について』を発行し、組合員・居住者・要援護者の各使用細則モデルを提示。取得する個人情報の利用目的や名簿の管理方法等を明示している。一般社団法人マンション管理業協会発行の『マンション管理業における個人情報保護ガイドライン』は主に管理会社向けに個人情報取得等に関する各種書式を掲載し、事業者の対応方法を示している。注意したいのは初めて事業者となる管理組合等にとっての安全管理措置。通常、組織的・人的・物理的・技術的と4つの安全管理措置が求められており、本格的に対応するとなると、相当な手間が予想される。
ただ、個人情報保護委員会はガイドライン案で小規模の事業者向けに特例的対応を示す方針だ。簡易な措置容認も有り得る。「委員会でも自治会等に配慮を求める意見はある。管理組合や自治会等の活動内容を踏まえ対応方法を検討しており、混乱が起きないよう、Q&Aでも示したい」 管理組合等が名簿の取り扱いに関し細則作成で対応する場合、どの程度まで規定を整えるべきか。同委員会は「ガイドライン等は秋から年内までには意見募集の形で公表する」と話している。
(マンション管理新聞:平成28年9月15日付)
投稿日:2016年08月08日 作成者:右田 順久 (2423 ヒット)
国土交通省は7月29日、マンション標準管理委託契約書・同コメントの改正を行った。
専有部分売却の際、宅建業者等からの求めに応じてマンション管理業者が開示するマンション管理情報について、項目を充実させ、新設の契約書別表5に一覧表記した。情報開示の事務費用は公布の相手方から受領できる規定を契約本文で明文化している。
改正はマンション管理業者が管理組合に代わり情報開示できる範囲を規定した第14条(管理規約の提供等)のみ。開示の相手方を拡大し、売却予定の管理組合員から情報提供の求めがある場合も、別表第5記載事項について書面または電磁的方法で開示する。
開示情報は売主組合員の滞納額も含め、個人情報保護法に照らし特段の配慮が必要な情報ではないとコメントで注釈している。別表第5の各項目は3月14日発表のマンション標準管理規約の別添4を反映している。
◇
改正内容はパブリックコメントでの提示案とほぼ同じ。28件の意見が有り、同省の考え方を示した。
管理委託契約変更の際、第14条のみの変更は「軽微変更」に該当し、同一条件の契約更新と同じ扱いとなるが、「管理組合と十分な調整を行うことが必要」とも指摘。重大事故・事件の対象は共用部分だけでなく、敷地も明示した。
(マンション管理新聞:平成28年8月5日付)
投稿日:2016年07月28日 作成者:右田 順久 (1994 ヒット)
民泊サービスの在り方に関する検討会で論点の一つとして指摘されていた「専ら住宅使用規定の管理規約における民泊の可否」問題。国土交通省の香山幹市市街地建築課長(当時)は考え方を整理し、示したい」と答えていたが、どう整理されるのか。
民泊新法の制度設計で示された民泊の定義は「住宅を活用した宿泊サービスの提供」。住宅か否かの判断は宿泊日数を基準とし、「180日以下の適切な日数」以内であれば住宅として扱い、それ以上であれば旅館・ホテル等として旅館業法で扱う形となる。適切な日数は新法で示される。
では、民泊新法上の「住宅」は管理規約上の「住宅」とどう関係するのか。5月13日・第10回検討会で香山課長は個々の管理規約における「住宅」の意味はその規約を作成した人が決めるもので、「行政法上、住宅をどう定義しようと影響は受けない」と明言しているが、新法における民泊に対し、従来の管理規約で民泊が禁止できるとの考えは示していない。
佐藤将年マンション政策室長は「現行規約が紛争の原因になるのは避けたい。民泊新法の条文が明らかになった後対応するが、考え方や形式はまだ白紙。管理規約の性質上、最善は各管理組合が可否の意思表示を明確にすること」と話す。
ただ、多くの管理組合は標準管理規約に準拠し「専ら住居として使用」の規定以上に詳細な禁止規定を設けていない。特別決議で規約を改正するのも負担はある。現行規約のまま民泊禁止の解釈が定まればいいが、禁止するにも参考モデルが欲しい、という管理組合は少なくない。 (マンション管理新聞:平成28年7月25日付)
投稿日:2016年06月28日 作成者:右田 順久 (1987 ヒット)
年内にも法案が提出される見込みの「民泊新法」の施行に際し、国土交通省が民泊関連の管理規約を提示することを検討している。
新法による民泊は「住宅を活用した宿泊サービス」と位置付けられており、現行のマンション標準管理規約における専有部分の用途変更だけでは、条文解釈をめぐって混乱が生じる可能性もある。同省は「専ら住宅~」という現行規定の解釈について専門家の意見を聞くなどする一方、トラブルの最小化を目的に分譲マンションで「民泊を認める場合」「民泊を認めない場合」それぞれの管理規約案を提示したい考えだ。
厚生労働省と観光庁が6月20日に開いた民泊サービスの在り方に関する検討会。この日で最後になった会合では、民泊サービスの制度設計の在り方についてまとめた最終報告案が提示され、承認された。22日には正式に報告書として公表された。
報告書は3月に示された中間報告を踏襲した内容。年間の提供日数に上限を設けるなどといった「一定の要件」を満たす「住宅」で宿泊サービスを行う場合、旅館業法の適用を受けず、インターネットによる届け出や登録で民泊を行えるようにする。
サービスの形態は住宅提供者が居住しながら一部を利用者に提供する「家主居住型」と、提供者が不在の「家主不在型」を想定している。いずれも分譲マンションの場合は「管理規約に違反していない」ことの確認を求める。ただ、新法による民泊は「住宅」を活用した民泊サービスと位置付けられている。会合終了後、検討会の事務局サイドは「区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない」と規定するマンション標準管理規約の「専有部分の用途」について、「現実には住戸に小さなオフィスがある職場兼住居というケースもあり、判断が分かれる可能性もある」とコメント。「今後も分かり易く整理したい」と、現行規定が新法による民泊を認めていないかどうかの解釈については明言を避けた。
国交省マンション政策室は「行政法上の『住宅』と、当事者間の合意内容にもよるが、管理規約のような民事上の契約における『住宅』の扱いはまた別」としている。ただ、今後立法化が進む中で規約解釈をめぐり、トラブルになる可能性もあることから、現行条文の解釈の掘り下げに加え、民泊関係の管理規約案を提示したい考えだ。(マンション管理新聞:平成28年6月25日付)
投稿日:2016年06月06日 作成者:右田 順久 (5023 ヒット)
都市再開発法を含む都市再生特別措置法等一部改正法案は6月1日、参議院本会議で賛成多数により可決・成立した。
自治体が都市計画に位置付ける場合の市街地再開発事業としてのマンション建て替えは、敷地共有者3分の2の同意でできるようになる。国土交通省は今後10年間で30団地での実施を目標としている。
一括法案の中でマンションが特に関係するのは都市再開発法第20条の改正。組合施行の第一種市街地再開発事業において、敷地共有では共有者全員の合意が必要だったが、共有者各人を1人と数え方を改めることで、同意要件が通常の再開発事業同様の3分の2以上になる。
建て替えに伴う敷地分割は行いやすくなるとされ、一定の既存建築物を存置できる個別利用区制度も創設された。法案の審議は衆・参両院国土交通委員会で5月20日と31日行われ、共に賛成多数で原案通り可決した。
5月20日衆・国土交通委員会で黒岩宇洋議員(民進)は、団地再生における区分所有法と都市再活法の優先関係を質問。
由木文彦同省住宅局長は「どちらの法を選ぶかは住民の合意形成次第」と答え、法改正により建て替えの際、市街地再開発事業が使いやすくなり、今後10年間の実施目標を「築45年以上の団地300弱のうち、1割に当たる約30団地」と示した。従前の1筆共有・全員同意による市街地再開発型建て替え実積は「墨田区の旧同潤会アパートのみ」答えた(同月31日・参院)。
木村伸子議員(共産)は20日、建て替えに際し区分所有法と比べ同意要件が低く、財産権・居住権の侵害になるのではと質問。
由木局長は区分所有法と異なり自治体の都市計画決定が必要となる点を強調し、「一定の施行区域要件を満たし、公益性・公共性のある事業として実施されるため、財産権等の侵害にはならない」と答えた。
市街地建築課によると、改正法の施行時期は9月中の見込。(マンション管理新聞:平成28年6月5日付)