「マンションの終末期を考える『長寿命化・その先』」(コミ研6/27フォーラム)~建物だけではない。管理組合にも「終わり」が!タブー視せず問題点整理を~

投稿日:2019年07月09日 作成者:右田 順久 (1618 ヒット)

マンションコミュニティ研究会(廣田信子代表)は6月27日、東京・月島の月島区民会館で第19回フォーラムを開いた。今回のテーマは「マンションの終末期を考える」。参加者は定員の100人を超え、「マンションの終活」に対する関心の高さがうかがえた。                                                                                       ◆
当日は明海大学の小杉准教授による「マンションにはどんな終わり方があるのか」、スペース・ユニオン代表の藤木亮介一級建築士による「終末期を定めた上で長期修繕計画を考えることの意味」、などの講演があった。

小杉准教授はまず、「マンションの長寿命化」は、一般的に「建物の長寿命化」と認識されているが「管理組合の長寿命化も含まれている」、と指摘。マンションの「終わり」には、「建物の終わり」と「管理組合の終わり」の二つがある、との見方を示した。その一方、この二つの「終わり」が「タイミングよく一緒に訪れるとは限らない」とも。
このため「建物の終わり」が来たときには建て替えを選択。「管理組合の終わり」が来たときには、管理不全状態に陥ることを防ぐ意味で、管理組合と建物を同時に終了させる手段である「土地・建物の売却」ができるよう、管理組合が「元気」なうちに準備しておく、といった、それぞれの終末期における活動例を挙げた。
スムーズな週末を迎える手法の一つとして小杉准教授は、建て替えや土地・建物の売却時期を数十年後に「仮終末」として設定し、「仮終末」までは健全な管理組合を確実に維持させる、「高経年期管理を」提案した。
仮終末までに建て替えや土地・建物売却等の事業準備や合意形成を進めておく。仮終末が近付いたとき、建て替えや売却の必要がなければ、仮終末の延長・再設定も可能だ、とした。                                                                                      ◇
藤木氏は「現在の長期修繕計画はほとんどの場合『永遠にマンションが持続すること』が前提でマンションの終わりを見据えていない。終わりを見据えなくてよいのか」と問題提起を行った。
その上で、物理的・経済的にマンションが継続できなくなる「持続限界」と、「持続限界」が来る前に管理組合が自ら定めた適正なマンションの終わりを指す「持続限度」について、築50年前後の実在するマンションをモデルに検討した長計例を報告した。
このマンションは築80年を「持続限度」と想定、築78年で予定する6回目の大規模修繕は実施しないが、築80年までは修繕を放棄せず「維持」を続ける。
この場合、築68年以降は積立金の負担が大幅に減るが、藤木氏は「築80年時点での積立金残高を建て替えや建物解体費用に流用できる」点から、マンション継続の可能性も見据え積立金の金額を維持するのが安全な計画だとした。
藤木氏は将来の積立金額の変化を勘案し、25年を超える「超要期修繕計画」の作成を提案。同計画で全体を見通し、積立金の支出がピークを迎える年代に備え、事前に積み立てていくことが望ましいとした。「建物の生涯を把握するために『終わり』の設定は有効」と締めくくった。
(マンション管理新聞・2019年7月5日付発行)

 

2019年版総合管理受託戸数ランキング<マンション管理新聞>~グループ別15社で61.2%ノシェア・寡占化一段と~ 

投稿日:2019年06月01日 作成者:右田 順久 (7009 ヒット)

マンション管理新聞社は、管理会社各社の2019年3月末現在の総合管理受託 戸数の調査を実施した。その結果を「総合管理受託戸数ランキング」2019年度版として発表する。同集計には部分管理や賃貸管理戸数を除いた。集計した管理会社は502社。
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4月1日付で合併や管理事業を譲り受けた管理会社の場合は、吸収されたり事業譲渡した管理会社の3月末時点での受託戸数を合算して集計した。    「グループ別ランキング」は持ち株などで事実上支配下にある会社の管理受託戸数を総合集計したもの。管理会社上位12社に順位の変化はなかった。あなぶきハウジングサービスが昨年15位から二つ順位を上げて13位になった。
昨年7月1日付で子会社のあなぶきセザールサポートと合併、戸数を増やし12万1930戸でランクイン。伊藤忠アーバンコミュニティも昨年10月1日付で子会社のIUCコミュティライフと合併。10万6908戸を数え、昨年の16位から15位にランクアップした。上位15社まで10万戸を突破している。
1位の日本ハウズイングは45万戸目前、合人社計画研究所は20万戸の大台を超えた。グループ別ランキング15社の顔触れに変化はなかった。1位の大京グループと2位の東急コミュニティグループの差が昨年の1万4325戸から1万1088戸と、3237戸縮まった。
戸数別で見ると30万戸以上は4社、20万戸以上は1社(合人社計画研究所)増えて8社、10万戸以上は2社(あなぶきハウジングサービス、伊藤忠アーバンコミュニティ)増えて15社に、5万戸以上は1社(東京建物アメニティサポート)増えて22社に、4万戸以上は1社(明和管理)増えて30社に、3万戸以上は37社、2万戸以上は合併で3社(ICUコミュ二ティライフ、西新サービス、あなぶきセザールサポート)減って、1社(大和地所コミュニティライフ)増えて48社になった。
分譲マンションのストックは昨年末時点で654万戸と見込まれる。上位15社の市場占有率は53.7%で昨年から0.7ポイント増加、グループ別上位15社で見ても61.2%で昨年から0.3ポイント増加し、市場寡占化が一段と進んでいる状況が窺われる。
ランキング順位で市場占有率で見ると、上位10社では43.7%(昨年43.8%)、20社で59.2%(同58.0%)、30社で66.5%(同65.1%)、40社で71.4%(同70.1%)。50社で74.8%(同73.8%)100社で84.7%(同84.0%)、200社で92,6%(同92.0%)、300社で95.9%(同95.3%)となった。ちなみに、上位3社で18.6%(同18.7%)、グループ上位3社で23.1%(同23.3%)だった。
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増加戸数ランキングを左表に示した。―省略)
1000戸以上増加させた会社は昨年と同じ32社となった。1位から3位までは合併効果が大きく寄与した。
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管理委託費見直しの動きが顕著になってきた。管理員や清掃員などの採用難、最低賃金アップ、社会保険関連費用アップ、そして働き方改革の推進などから、受託している管理組合に管理委託費の値上げを依頼する動きだ。適正な収益が確保できない場合は管理継続の辞退を申し出るケースも増えている。大手管理会社の中には、親会社が分譲するマンションの受託管理に徹底し、リブレイスで受託した他社分譲マンマンションは、管理組合に自ら解約を申し出ているところもある。
管理会社も管理コストの上昇を指をくわえて見ているだけではない。少しでも上昇コストを自社で吸収できるように事務の効率化に余念がない。例えば、組合会計の業務効率化を目指してウェブ通帳化を進めているところもある。通帳レスにすることで増え続ける通帳保管や外に持ち出しての通帳記帳などの業務をなくし、大幅な業務改善と金銭事故防止につなげている。
すでに6割までウェブ通帳化を進めている大手会社も。AI(人工知能)やIoTを駆使したシステムの開発・運用にも各社は力を入れている。

国を挙げてマンションの長命化が叫ばれているが、その達成には「継続的な維持管理」が欠かせない。管理組合と管理会社が知恵を出し汗をかいて良きパートナーシップを構築することが求められている。
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<管理会社上位15社の顔ぶれ (2019年)>

順位 前年順位 管理会社 受託戸数
1位 1位 日本ハウズイング 448,774戸
2位 2位 大京アステージ 428,633戸
3位 3位 東急コミュニティ 338,581戸
4位 4位 三菱地所コミュニティ 334,601戸
5位 5位 長谷工コミュニティ 275,084戸
6位 6位 大和ライフネクスト 265,512戸
7位 7位 三井不動産レジデンシャルサービス 205,426戸
8位 8位 合人社計画研究所 204,652戸
9位 9位 住友不動産建物サービス 190,721戸
10位 10位 コミュニティワン 190,721戸
11位 11位 日本総合住生活 160,977戸
12位 12位 野村不動産パートナーズ 159,784戸
13位 15位 あなぶきハウジングサービス 121,930戸
14位 13位 穴吹コミュニティ  107,889戸
15位 16位 伊藤忠アーバンコミュニティ 106,908戸


グループ別ランキング 
(G:グループの意味)

1位 大京G            536,522戸
2位 東急コミュニティG      525,434戸
3位 日本ハウジングG       449,677戸
4位 長谷工管理ホールディングス  394,651戸
5位 大和ハウスG         360,619戸
6位 三菱地所コミュニティ     334,601戸
7位 三井不動産レジデンシャルサービスG  258,671戸
8位 合人社計画研究所G      230,356戸
9位 住友不動産建物サービス    190,721戸
10位 日本総合住生活        160,977戸
11位 野村不動産パートナーズ    159,784戸
12位 あなぶきハウジングサービス  121,930戸
13位 伊藤忠アーバンコミュニティ  106,908戸
14位 日本管財G          95,415戸
15位 東京建物アメニティサポート  74,618戸

*マンション管理新聞:2019年(令和元年)5月25日付より抜粋

付置義務駐車場 台数減OK <東京都>~認定基準など整理し通知・要件緩和認める~

投稿日:2019年05月02日 作成者:右田 順久 (3988 ヒット)

既存分譲マンションにおける「駐車場余り」問題を受け東京都は、都条例で定めた付置義務がある駐車場台数を緩和する場合の認定基準等を整理し、市街地建築部長名で、都内の特定行政庁建築主務部長宛に3月25日付で通知した。

マンション内の駐車場が利用されていない場合、基準をクリアすれば、都の条例で義務付けられた敷地内駐車場の台数を減らすことが可能になる。都の駐車場条例では、既存建物に対して利用実態に応じた付置義務の緩和を認めているが、既存マンションにおける同規定の運用を、今回「技術的助言」として具体的に定め、通知した。
通知では既存マンションの駐車場について、居住者の高齢化や自動車保有に対する意識変化等に伴い「利用率が低下している」と分析。その一方、付置義務を満たすために設置されるケースが多い機械式駐車場に対し「安全対策の強化や定期的な保守点検の実施に伴い維持管理費用の負担がマンション管理の課題になっている」と指摘している。このため利用実態に応じた駐車施設の維持管理が可能になるよう、設置義務がある駐車場台数を緩和する際の基準を提示した、としている。
付置義務がある駐車場台数を減らすことができるのは、既存駐車場の利用実績が付置義務のある駐車場台数を上回っていない。既存駐車場を撤去する部分について、跡地の利用計画が関係法令に適合している、などといった条件を満たしているケース。
管理組合は、都が作成した「駐車場管理運営計画」等に必要事項を記入し、特定行政庁に事前協議を申請する。協議で基準をクリアしている、と判断されれば事前協議は終了し、管理規約や使用細則の改正を行った後、正式な申請を行う。「技術的助言」には、管理規約の使用細則の改正例も提示されている。「技術的助言」は都の「マンションポータルサイト」で閲覧できる。
(マンション管理新聞:令和元年5月5日付、4月25日合併号)

都条例が公布・施行~3月29日付・28日の本会議で可決~

投稿日:2019年04月06日 作成者:右田 順久 (1392 ヒット)

1983年以前に建築された6戸以上のマンションに管理状況の届け出を義務付ける「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」が3月28日の東京都議会本会議で可決・成立し、翌29日に公布・施行された。管理状況の届け出に関する規定は来年4月1日に施工する。具体的な届け出事項や方法、内容の更新時期などは、規則で正式に定める。
本会議の討論では古城将夫(公明)都議が同条例に言及、都市整備委員会で2019年度に実施すると答弁があった、管理組合が機能していないマンションに専門家を派遣するモデル事業について「老朽化に直面する多くのマンションで建て替えに向けた合意形成が進むよう、管理組合への粘り強い支援を求める」と述べた。
(マンション管理新聞:平成31年4月5日付)

分譲時『的確な情報提供を』・骨子案を承認<社会資本整備審・不動産部会会合>~将来の管理費・修繕膳積立金額「不動産業ビジョン」策定へ~

投稿日:2019年03月15日 作成者:右田 順久 (1181 ヒット)

社会資本整備審議会・産業分科会不動産部会(中田裕康部会長)の第38回会合が3月1日、東京都内で開かれた。
この日は1992年以来、27年ぶりの策定となる「新・不動産業ビジョン2030年(仮称)」の概要と骨子案が示された。今後の業態の在り方として「開発・分譲」には、分譲時に将来の管理費・修繕積立金について的確な情報提供を行うよう求めた。
「管理」には、資産価値の維持・向上に向けた適切な管理サービスの提供、コミュニティ形成や高齢者の見守りといった付加価値サービスを通じた住環境の向上・管理情報の蓄積化・適切な開示を促している。
骨子案は大筋で承認され、3月28日開催予定の次回会合で取りまとめを行う方針だ。                                                               ◇
「不動産業ビジョン」は、市場の発展を持続的に確保していくために官民共通の目標や、不動産業に関わる各事業者の役割などを示している。
骨子案では、マンション管理の現状として建物と居住者の二つの高齢化が進み、修繕衝立金不足、管理組合役員のなり手不足が課題になっている、とし指摘。
こうした現状を踏まえ、適切な管理、修繕・改修で長寿命化や付加価値化を図り、流通・活用を促す「ストック型社会の構築」など、7項目の官民共通の目標を設定した。
今後約10年の間に重点的に検討する政策課題としては、「ストック型社会」など10項目を提示。「ストック型社会」では、不動産の管理状況・ガバナンスを考慮した不動産評価、マンションの管理状況の把握などを挙げている。他では、不動産取引における災害リスクや不動産の性能、管理状況に係る情報提供の在り方など課題としている。
(マンション管理新聞平成31年3月5日付)

年度内に公布・施行へ・管理状況届け出、来年4月から<東京都>~『管理不全』予防へ条例案~

投稿日:2019年02月28日 作成者:右田 順久 (1430 ヒット)

1983以前に新築された、6戸以上の分譲マンション管理者に管理状況の届け出を義務付ける東京都の条例案が2月20日に閉会した都議会定例会に提出された。
本会議での議案説明、常任委員会での審議を経て、3月28日の本会議で可決・成立する見通しだ。都によれば、年度内の公布・施行を見込んでいる。管理状況届け出制度は、来年4月1日にスタートする予定だ。
◇◇◇
条例案で「都知事が定める」とされた、「管理不全」を予防し適正な管理を実現するための施策を具体化・推進するための総合的な計画、管理の適正化に関する指針は、新年度に入る4月以降に策定・公表する。
条例案の作成に先立ち都が行った意見募集(パブリックコメント)には13通・50件が寄せられた。管理組合だけでなく、理事会の定義を求める意見もあり、都は理事会の役割等について「指針において記載することを検討する」旨の考え方を示した。
条例は分譲マンションの管理不全を防ぎ、適正な管理を促進するのが主な目的。関係者の協力のもと、管理主体の管理組合に対して「行政が積極的に関わり」と明文化している点が特徴だ。東京都に加え、管理組合・区分所有者、マンション管理士、マンション管理業者、分譲事業者の責務を規定した。罰則規定はない。
管理組合の責務は、管理の主体としてマンションの適正な管理・社会的な機能の向上に向けて取り組むよう努めなければならない、と規定されている。区分所有者は、「管理組合の運営に参加するよう」求められている。管理組合の留意事項として、管理状況の届け出項目に当たる運営体制の整備、管理規約の設定、総会開催と議事録作成、管理費・修繕積立金の額・徴収方法の規定、修繕の計画的な実施が定められた。管理状況の届け出は、原則的にマンションの管理者が行う。届け出対象外でも任意の届け出はできる。
知事は必要な範囲でマンションの調査、助言ができる。届け出がない場合や内容が事実と異なる、助言だけでは管理状況の悪化を防ぐことが困難なときは指導・勧告ができる。条例案では、すでに同趣旨の管理状況届け出制度を運用している自治体は都の制度の対象外になる、と定めたが、各自治体は都の制度適用を求めることも可能だ。

(マンション管理新聞・平成31年2月25日付)

適正化推進事業に1・22億円<国交省・19年度予算案>~「長期優良」では長計作成支援など・1年度比1・36倍~

投稿日:2019年01月09日 作成者:右田 順久 (1375 ヒット)

国土交通省は12月21日、2019年度予算の決定概要を発表した。住宅局は引き続き既存ストックの維持・向上促進や地震対策に向けた事業を行う。

マンション政策室は「マンション管理適正化・再生推進事業」を継続。18年度の約9000万円から1・36倍の1億200万円を計上した。例年同様、管理組合運営のモデルとなり得る先進的な取り組みなどに対し補助金を交付する。自治体が行うマンション実態調査等に対しても支援を行う方針だ。
住宅生産課は「安心R住宅」制度などを含む「住宅ストック維持・向上促進事業」を引き続き実施し、リフォーム市場の活性化や中古住宅流通を促進する。予算額は18年度比較比0・88倍の8億5500万円。「長期優良住宅化リフォーム推進事業」は同期比1・07倍の45億円。マンションに対しては長期修繕計画の作成支援やリフォーム支援を行い、マンション政策室が管轄する。
消費税率引き上げに際し「住宅市場安定化対策事業」「住宅需要変動平準化対策事業」として計2085億円を付けた。新たに「次世代住宅ポイント制度」を創設し、耐震や省エネ、家事負担軽減等に資する新築住宅の取得やリフォームに対し、防災商品や子育て関連商品などと交換できるポイントを付与する。対象は19年10月以降に引き渡す住宅。指定された耐震等級やエネルギー消費量等級、劣化対策等級を満たす新築住宅を購入した場合、戸当たり30万ポイントを支給。長期優良住宅やネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)の場合にはさらに5万ポイントを加える。リフォームの場合、断熱やバリアフリーに係る改修などを行った際、部位や設備に応じて同30万ポイントを上限に付与する。
建築指導課は社会資本整備総合交付金等の内数で「住宅・建築物安全ストック形成事業」を実施。同事業内に新たに「ブロック塀等の安全確保事業」を盛り込む。自治体が指定した避難路沿道ブロック塀等に係る耐震診断や除却、改修に地方公共団体が補助制度を設けている場合、国と地方公共団体、民間が1メートル当たり8万円を上限に工事費の分の1づつを交付する。閉じ込めや長期運転停止に係るエレベーターの地震対策にも取り組む。
観光庁は違法民泊の疑いがある物件を特定できるシステムの構築に乗り出す。海外の無登録仲介サイトにおける掲載物件情報を集めてそこから違法性が疑われる物件を抽出、リスト化するシステムを整備する。予算は同比1・78倍の1億9300円。
(マンション管理新聞:平成31年1月5日号発行)

2018年のマンション10大ニュース~マンション管理新聞発表~

投稿日:2018年12月19日 作成者:右田 順久 (1722 ヒット)

NEWS 1 「民泊」スタート 禁止が大多数
 住宅宿泊事業法に基づく「民泊」が6月15日、始まった。公益財団法人マンション管理センターが7月に公表した「民泊対応状況管理組合アンケート調査」の結果では全体の9割以上が「民泊は全面的に禁止した」と回答。管理規約で禁止したのが最多で7割以上だった。民泊を許容した管理組合はなかった。民泊を禁止の理由のトップ3は「騒音・ごみ廃棄など迷惑行為」「防犯・安全面」、「不特定多数の立ち入りによるいざこざ」の懸念だった。

NEWS 2  国交省 大規模修繕で初の実態調査
 国土交通省は5月11日、「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」結果を発表した。管理組合の利益と相反する立場に立つ「不適切コンサルタント」問題を踏まえ、大規模修繕工事の設計・管理業務を受託する設計コンサル業者を対象に、業務の内容や業務量などを尋ねた。調査ではコンサルの業務内容別や工事金額別にみた業務時間などを明らかにしており、同省は「設計コンサルや施工会社から提出される見積もり内容と調査結果とを比較して事前に検討することにより、適正な工事発注などへの活用が期待できる」としている。

NEWS 3  地震・豪雨・台風 各地で被害も
 6月から9月にかけて大阪北部地震、西日本豪雨、台風20・21号、北海道胆振東部地震と立て続けに自然災害が発生し、マンションでも被害が出た。最大震度6弱を記録した大阪北部地震では、外壁のひび割れをはじめ、数棟で「中破」があった。台風20号では、兵庫県西宮市の団地型分譲マンションの屋根部分に敷設された防水材が半数以上剥がれ、一部が真下の駐車場に落ちるなどした。記録的な暴風で近畿地方を横断した台風21号では、大阪市港区のマンションで飛来物が窓ガラスを割って侵入し、居住者が亡くなる事故も起きた。最大震度7の北海道胆振東部地震では、停電によるエレベータ停止や断水があった。

NEWS 4  各自治体が耐震診断結果を公表
 東京都は3月29日、耐震改修促進法に基づき、都が所管する耐震診断義務化建築物の耐震診断結果などを公表した。2012年4月から条例で特定緊急輸送道路沿道の建築物に耐震診断を義務付けて未実施物件名を公表していたが、耐震診断結果は含まれていないため公表は初めてとなった。都に報告した分譲マンションは17区10市で概ね91件に上り、このうち震度6強から7程度の大規模地震で倒壊・崩壊する「危険性が高い」とされるのは6件、「危険性がある」とされるのは13件だった。

NEWS 5  『団地型』で敷地売却が可能に
 国土交通省は3月30日、「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」の施行規則を改正した。同法に基づく敷地売却制度を活用した団地型マンションの再生の円滑化を図る目的で、一団地内にあるよう除却認定マンションと敷地を一括して全部買い受けようとする場合に、買い受け人に対して買い受け計画の認定申請時に他棟の申請予定時期を記載するよう定めた。団地型のマンション標準管理規約・コメントも同日改正し、敷地売却組合の設立認可までに必要な場合は団地修繕積立金を取り崩して経費に充当できるよう追記した。団地型マンションの敷地売却制度の構築は、昨年8月から「住宅団地の再生のあり方に関する検討会」で進められており、中間取りまとめとして、今回の改正が行われた。

NEWS 6  管理状況届け出制度 東京都が2月にも条例案

東京都は11月26日、都庁で「マンションの適正管理促進に関する検討会」の最終会合を開いた。管理状況届け出制度の概要などを盛り込んだ「東京におけるマンションの適正な管理の促進に向けた制度の基本的な枠組み」について、最終まとめ案を大筋で承認。30日に最終まとめ案を公表した。都は来年2月の都議会に条例案を上程する方針。

NEWS 7  金融インフラ整備へ支援機構が勉強会
 住宅金融支援機構は7月26日、「マンションの価値向上に資する金融支援のあり方勉強会」を設立すると発表した。勉強会は12月4日までに分科会を含めて計4回開催した。機構は、共用部分のリフォーム融資は「民間金融機構の取り組みが限定的」と指摘。「管理組合とマンション管理に関する市場関係者の間に情報の非対称性が存在する」との認識も示し。適切な修繕工事の実施に当たっては、「金融インフラの整備が課題」とした。 

NEWS 8  熊本地震 全15棟の公費解体が完了
 熊本市の被災マンション15棟(件数ベースで11件)の公費解体が10月22日に完了した。11の件数のうち、敷地の売却が判明しているのは4件、公費解体ではないが「自費解体」後に敷地を売却したマンションは5件。建替えを決めたのは2件。被災マンションに対する支援では、管理組合団体やマンション管理士会、専門家らが支援に携わった。

NEWS 9  標準管理委託契約書改訂
 国土交通省は3月9日、マンション標準管理委託契約書・コメントを改訂した。従前は義務だった理事会・総会議事録案の作成について「管理組合が協力を必要とするとき」と限定し「協力を必要とするときは、協力方法について協議する」との条文を加え、事前協議で業務範囲や内容を決めるように改めた。

NEWS 10  神戸市 『超高層』の研究会設置
  神戸市は9・11月、市役所で「タワーマンションのあり方に関する研究会」を開いた。11月の最終会合では修繕積立金の不足やコミュニティーの希薄化などの検討課題への対応策案を報告。管理状況の把握などの対応策案として、届出に基づき認証する「神戸版タワーマンションマネジメント制度」の素案が示された。
*マンション管理新聞(平成30年12月15・25号付)より抜粋。

耐震改修促進法を改正・来年1月施行予定<国交省>~緊急輸送路沿道建築物・耐震診断 義務化へ、ブロック塀も~

投稿日:2018年11月08日 作成者:右田 順久 (2358 ヒット)

国土交通省は、1981年5月31日以前に建築確認申請を受けた、いわゆる「旧耐震基準」で、一定の高さを有する塀に対し、耐震改修促進法に基づく耐震診断を義務付ける。
今年6月に発生した大阪北部地震で、女児が倒壊したブロック塀の下敷きになり死亡した事故を受けた措置。同省は同法施行令や施工規則を一部改正し11月中にも公布、来年1月1日に施行する予定だ。改正に係るパブリックコメントは11月10日まで募集している。

同法施行令4条に規定する、自治体が定める緊急輸送道路曽沿いなどに建ち倒壊した際に当該道路の通行を妨げる恐れのある「通行障害建築物」の要件を改正。改正により、当該道路に面する部分原則長さ25メートル超で、倒壊したときに道路の半分超をふさぐ恐れのある塀も耐震診断が義務付けられる。分譲マンションも対象だ。
塀の耐震化に関する規定はこれまでなく、2006年の改正耐震改修促進法に基づく「基本方針」で、地方公共団体に対しブロック塀の倒壊防止に係る改善指導に努めるよう促すだけにとどまっており、同省は今年8月の社会資本整備審議会で、同法の枠組みを生かした塀の耐震化を推進する仕組みを検討していた。今回の改正についてはあくまでも災害時などの避難・救助や物資輸送を円滑に行う目的で、建物と建物の間に設置している「隣接塀」に係る義務化は「今のところ考えていない」(建築指導部)という。
(マンション管理新聞:平成30年11月5日付)

東京都 管理状況届け出制度で意見募集~1983年以前建設 「6戸以上対象」 10月24日締め切り~

投稿日:2018年10月15日 作成者:右田 順久 (1476 ヒット)

東京都は9月25日、1983年以前に建設された6戸以上のマンションに管理状況の届け出を求める制度を盛り込んだ「東京におけるマンションの適正な管理の促進に向けた制度の基本的な枠組み案」を公表し、意見募集を始めた。10月24日まで受け付ける。

案は3月から開催中の「マンションの適正管理促進に関する検討会」(齋藤広子座長)で議論されており、都は寄せられた意見を参考に最終まとめを行う。
公表された案は第5回検討会で示された内容とほぼ同様。5年ごとに管理状況の届け出を求める。制度開始後、1984年以降に建設されたマンションも順次届け出対象にする。
届け出項目は「管理不全を予防するための必須事項」とした、管理組合や管理規約、管理費・修繕積立、大規模修繕実施などの有無。
「無」が一つでも当てはまる場合、「管理不全の兆候が疑われる」マンションと位置付け、都や市町村が個別相談やアドバイザー派遣など、適正管理に係る支援を実施する。
「管理不全」とは「マンションの維持・管理や修繕が適切に行われず、外壁が落下するなど周辺に悪影響を与えている状態」と定義した。「管理不全の兆候」とは「管理運営における体制の未整備や資金不足等により、マンションの維持・管理が適切に行われておらず、そのまま放置すると管理不全に陥る恐れがある状態」を指す。
都や管理組合、マンション管理士、管理会社らマンション管理に関わる各主体の責務と役割も明記。管理組合は「管理の主体として、法令等の定めるところに留意し適正な管理を行う」「マンションの社会的な機能の向上に資する取り組みを行うよう努める」役割・責務がある、とした。管理業者は「受託業務を適切に実施するとともに、管理組合の運営等に関し、専門的見地から提案や助言を行うしとしている。

意見募集は郵送やFAX、電子メールで受け付ける。 問い合わせ先:東京都マンション施策推進担当☎03(5320)4933へ。
(マンション管理新聞:平成30年10月5日付)

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