投稿日:2020年09月02日 作成者:右田 順久 (2071 ヒット)
国土交通省は「マンション管理の新制度の施行に関する検討会」を設置して7月30日、東京・霞が関の経済産業省別館で第1回会合を開いた。今年6月に公布された改正マンション管理適正化法で新たに規定された国の基本方針、管理計画認定制度における管理計画の認定基準、行政による助言・指導等の基準について検討する。来年3月まで全4回開催する予定で、座長には横浜市立大学国際教養学部教授の齊藤広子教授が就いた。
基本方針は2022年3月末までに告示する予定。マンション管理適正化推進計画制度、管理計画認定制度は22年4月のスタートを目標としている。この日の会合では新制度の概要と基本方針・認定基準案を提示し意見交換が行われた。(下記の基本方針案をご参照。)
「その他」の重要事項としてはマンション管理士制度の一層の普及促進、建築基準法に基づく命令等の措置、工事・設計コンサルタントの業務の適正化、ICT化の進展対応などが盛り込まれている.
認定基準は「管理費と修繕積立金の区分経理がされているか」「計画期間が25年以上の長期修繕計画が作成されているか」など、一般的な内容だ。次回は8月18日に行う予定。 ◇
検討委員会は齊藤座長を含め11人。一般社団法人マンション管理業協会・同マンション計画修繕施工協会らもオブザーバーとして参加している。座長代理は東洋大学理工学部の秋山哲一教授。他の委員は以下の通り。
戎正晴弁護士/岡本知佳子・神戸市民間住宅担当課長/鎌野邦樹・早稲田大学法学学術院教授/川上湛永・NPO法人全国マンション管理組合連合会会長/小林利之・公益財団法人マンション管理センター専務理事/篠原みち子弁護士/瀬下義浩・一般社団法人日本マンション管理士会連合会会長/富永信忠・東京都マンション課長/村井芳巳・戸田市まちづくり推進課課長
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【基本方針の概要(案)】
1.マンションの管理の適正化の推進に関する基本的な事項
(1)管理組合、国、地方公共団体等の役割
(2)管理組合の役割
(3)国の役割
(4)地方公共団体の役割
(5)マンション管理士およびマンション管理業者の役割
2.マンションの管理の適正化に関する目標の設定に関する事項
3.管理組合によるマンションの管理の適正化の推進に関する基本的な指針
(マンション管理適正化指針)に関する事項
➀管理組合によるマンションの管理の適正化の基本的方向
②マンションの管理の適正化のために管理組合が留意すべき事項
(1)管理組合の運営
(2)管理規約
(3)共用部分の範囲および管理費用の明確化
(4)管理組合の経理
(5)長期修繕計画の策定および見直し等
(6)発注等の適正化
(7)良好な居住環境の維持および向上
(8)その他配慮すべき事項
③マンションの管理の適正化のためにマンションの区分所有者等が留意すべき事
④マンションの管理の適正化のために管理委託に関する事項
4.マンションがその建設後相当の期間が経過した場合その他の場合において当該マンションの建替えそ
の他の措置に向けたマンションの区分所有者等の合意形成の促進に関する事項
5.マンションの管理の適正化に関する啓発及び知識の普及に関する基本的な事項
6.マンション管理適正化推進計画の策定に関する基本的な事項
➀マンションの管理の適正化に関する目標
②マンションの管理の状況を把握するために講ずる措置に関する事項
③マンションの管理の適正化の推進を図るための施策に関する事項
④管理組合によるマンションの管理の適正化に関する指針
(都道府県等マンション管理適正化指針に関する事項)
➄マンションの管理の適正化に関する啓発および知識の普及に関する事項
⑥計画期間
⑦その他マンションの管理の適正化の推進に関し必要な事項
7.その他マンションの管理の適正化の推進に関する重要事項
➀マンション管理士制度の一層の普及促進
②管理計画認定制度の適切な運用
③都道府県と市町村との連携
④建築基準法に基づく命令等の措置
➄修繕工事および設計コンサルタンとの業務の適正化
⑥ICT化の進展への対応
(マンション管理新聞:令和2年8月5日付)
投稿日:2020年08月01日 作成者:右田 順久 (3172 ヒット)
一般社団法人マンション管理業協会(管理協)は、7月20日付で今年2月に公表した
『マンション管理会社の感染症等流行時対応ガイドライン』を改訂し『マンション管理業における新型コロナウイルス等感染症対応ガイドライン』として公表した。ガイドラインは感染拡大の第2・第3波が危惧されるとしており、管理協への相談や関係機関が広表した情報などを踏まえ、大幅に内容を拡充している。
◇
管理組合内で感染を覚知の場合の「十分な助言」
関連法令等への対応ではまず、総会の開催・延期に関する「管理組合の意思決定」と意思決定について集会や書面決議に代わる「ITを活用した承認」について追加。
公益財団法人マンション管理センターが広表した「新型コロナウイルス感染拡大における通常総会開催に関するQ&A」「ITを活用した総会・理事会の開催に関するQ&A」などを示している。
管理組合の意思決定では、収支決算・事業報告は「書面または電磁的方法による決議ではなく、集会をもって事業報告を行うことと解せる」とし「注意が必要」とした。マンション管理適正化法では、財産の分別管理(76条・同施行規則第87条5項)と管理事務の報告(第77条)関係の原則的な対応を追加した。
76条関係では、修繕積立金等の徴収や保管口座への収納、各種支払い手続きは「管理組合の根幹」として社員の配置体制を整えるよう努める、としている。毎月交付義務がある「5項書面」は「規定通りの対応が必要」とした。77条では管理業務主任者のマスク着用や管理者等と距離を保つ対応を上げている。77条と重要事項の説明等・契約成立時の書面交付におけるIT活用についても追加しているが、内容は適正化の政省令改正を踏まえガイドラインに反映予定としている。
ほかに法定点検・検査等の実施について新設。年1回の貯水槽の清掃では厚生労働省の建築物衛生法関連のQ&Aを示し「法に基づき実施しなければならない」とした。
法令以外では企業としての感染防止等の対策を新設。管理業者が管理組合内で感染者を覚知した際の留意点も示した。二次感染防止等の観点で「管理組合にその事実を報告する必要がある」としたが、報告を受けた管理組合の対応によってはトラブルになる可能性も指摘。そのため、あらかじめ理事長や理事会からの相談に応じ「該当住戸が特定されないようにするなどプライバシーおよび個人情報保護法への配慮」や「感染拡大防止」などの必要性について助言を行うとしている。
(マンション管理新聞:令和2年7月25日付)
投稿日:2020年07月01日 作成者:右田 順久 (2258 ヒット)
マンション管理適正化法・建替え円滑化法の改正案が6月16日、衆議院本会議で全会一致で可決、成立。24日に公布された。12日には、国土交通委員会で審議され、全会一致で原案通り可決されている。
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マンション管理適正化法の本格的な改正は同法が制定された2000年以降、今回が初めて。
改正法は一部を除き、公布から2年以内に全面施行される。施行日は、今後政令で定める。
改正法の目玉は地方自治体による「マンション管理適正化推進計画」の策定と計画を策定した区域における、管理組合が定めた「管理計画」の認定制度の創設だ。
改正法上の適正化推進計画を策定済みと位置付けられる自治体を含めて、4月30日時点で28都道府県・7市が計画の策定を予定している。
(マンション管理新聞:令和2年6月25日付)
投稿日:2020年06月01日 作成者:右田 順久 (3453 ヒット)
マンション管理新聞社は、管理会社各社の2020年3月末現在の総合管理受託戸数の調査を実施した。
その結果を「総合管理受託戸数ランキング」2020年度版として発表する。同集計には部分管理や賃貸管理戸数を除いた。集計した管理会社は514社。4月1日付で合併や管理事業を譲り受けた管理会社の場合は、吸収されたり、事業譲渡した管理会社の3月末時点での受託戸数を合算して集計した。
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「グループ別ランキング」(後掲のランキング2.を参照)は持ち株などで事実上支配下にある会社の管理受託戸数を総合集計したもの。オリックスのグループ広報によれば、社内で現在、大京アステージと穴吹コミュニティを「大京ユニット」と表現しているが、弊紙の調査では「グループ」として集計した。
グループ上位15社の顔触れは同じだが、野村不動産パートナーズと日本総合住生活が入れ替わり、それぞれ10位、11位となった。「会社別上位15社の顔ぶれ」(後掲のランキング1.を参照)に変化はなかったが、順位に変動があった。長谷工コミュニティが長谷工スマイルコミュニティ(前回26位、沖縄支店の管理事業を新会社。長谷工コミュニティ沖縄に分割継承)と総合ハウジングサービス(同28位)を吸収合併したことで、36万6793戸を数え、前回の5位から3位にランクアップした。
合人社計画研究所が昨年から1万2423戸増やしたことで、三井不動産レジデンシャルサービスを抜いて7位になった。野村不動産パートナーズは前回の12位から10位へランクアップした。
9位の住友不動産建物サービスは前回同様順位は9位だが、1万7574戸も減らした。昨年の人手不足、人件費高騰を受けて同社がサービスの品質を保てないとして「契約辞退」を申し入れた結果の表れだ。弊紙が昨年10月15日第1118号の「業界を覆う『建サ』ショック」で詳細を報じたが、親会社である住友不動産の積極的なマンション供給を考慮すると、「約1割に『辞退』を通知」と報じた弊紙の内容を裏付けた形だ。同社の決断は「これまで『どんな案件でも抱えていないといけない、管理組合の無理な要求にも応じないといけない』とする風潮があった管理業界に一石を投じた」との指摘も多く、実際、契約辞退を申し出た管理会社も少なくない。
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「コスト競争」から「IT化競争」へシフト必至
弊紙が昨年8〜9月に管理会社30社を対象に実施したアンケート調査で、30社全てが「管理委託費の値上げの可能性を感じている」と回答。その約9割が実際に「値上げ提案を行っている」と答え、また、全体の7割以上に当たる22社が契約辞退などの措置を「取ることがある」と回答した(2019年10月25日付・第1119号参照)。最低賃金の上昇や働き方改革などでコスト増がその背景にある。また、「契約辞退」の申し出の理由では「採算が取れない」以上に、「管理組合の要求・注文が不合理」がトップを占めた。管理会社各社は業務の効率化、社内経費の見直しによる経営努力、そして管理業務の仕様変更の申し出などさまざまな努力を重ねたものの、「値上げ」提案が受け入れられず、結果的に受託管理戸数を減らした管理会社も少なくなかった。
新型コロナウイルス問題で社会のインフラ機能を支える管理会社の重要性が改めて確認された。その一方、人手不足、特に現場従業員の人手不足は深刻度を深めている。管理組合に対して、管理会社の経営環境の理解をどう深めていくかが、大きな課題だ。また、コロナ禍でIT化の必要性が急速に高まった。今後は電子投票による総会、ウェブ理事会、テレビ会議システムなどITを駆使した管理運営が急スピードで拡大しよう。単なるコスト競争から、こうしたIT競争が受託管理戸数ランキングに反映されてくると予想される。
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総合管理受託戸数ランキングでは30万戸以上が5社、10万戸以上が15社、5万戸以上が23社、3万戸以上が35社、、1万戸以上が85社となった。なお、MMSマンションマネージメントサービス社が管理戸数を減少させているが、同社によれば「部分管理」を見直した結果、としている。
分譲マンションのストックは昨年末時点で664万戸と見込まれる。上位15社の市場占有率は54.7%で昨年から1.0%も増加した。グループ別上位15社ではでは61.2%と昨年と同じだった。
ランキング順位で市場占有率を見ると、上位10社で44.7%(昨年43.7%)、20社で60.2%(同59.2%)、30社で67.1%(同66.5%)、40社で71.7%(同71.4%)、50社で74.8%(同74.8%)、100社で84.6%(84.7%)となった。
増加戸数ランキングについては(同リストは割愛)、合併効果で9万戸以上増加させた長谷工コミュ二ティがトップ。住友不動産建物サービスをはじめとした管理会社による『管理委託契約辞退申し入れ』の動きに伴い、この1年はちょっとしたリプレイス活況時期でもあった。
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1.【2020年版の管理会社上位15社の顔触れ】 ※( )内は総合管理の受託戸数
第1位:日本ハウズイング(459,551戸)、第2位:大京アステージ(429,576戸)、第3位:長谷工コミュニティ(366,793戸)、第4位:東急コミュニティ)(341,041戸)、第5位:三菱地所コミュニティ(335,980戸)、第6位:大和ライフネクスト(273,011戸)、第7位:合人社計画研究所(217,075戸)、第8位:三井不動産レジデンシャルサービス(209,421戸)、第9位:住友不動産建物サービス(173,147戸)、第10位:野村不動産パートナーズ(164,126戸)、第11位:日本総合住生活(161,162戸)、第12位:コミュニティワン(160,377戸)、第13位:あなぶきハウジングサービス(127,990戸)、第14位:穴吹コミュニティ(108,757戸)、第15位:伊藤忠アーバンコミュニティ(106,680戸)
◆◆
2.【2020年版グループ別ランキング】 ※G:グループ、( )内:グループの受託戸数
第1位:大京G(538,333戸)、第2位:東急コミュニティG(525,313戸)、第3位:日本ハウズイング (460.454戸)、第4位:長谷工管理ホールディングス(403,275戸)、第5位:大和ハウスG371,524戸 )、第6位:三菱地所コミュニティ(335,980戸)、第7位:三井不動産レジデンシャルサービスG(277,985戸)、第8位;合人社計画研究所G(244,856戸)、第9位:住友不動産建物サービス(173,147戸)、第10位:野村不動産パートナーズ(164,126戸)、第11位:日本総合住生活(161,162戸)、第12位:あなぶきハウジングサービス(127,990戸)第13位:伊藤忠アーバンコミュニティ(106,680戸)、第14位:日本管財G(96,834戸)、第15位:東京建物アメニティサポート(76,387戸)
〜終わり〜
(マンション管理新聞:令和2年5月25日付より抜粋)
投稿日:2020年05月19日 作成者:右田 順久 (1469 ヒット)
東京カンテイ(本社東京、長田千江美社長)は5月7日、2010年〜20年に発売された新築マンションのランニングコスト推移を調査・分析し、結果を公表した。首都圏では10年から19年の管理費は18.4%、修繕積立金は2割以上、それぞれ上昇している。
◇
東京・神奈川・千葉・埼玉の首都圏で10〜19年に発売した新築物件の管理費・修繕積立金・修繕積立基金・駐車場使用料(表は省略)を示した。管理費・積立金・基金は1戸当たりの単価を基に専有面積70平方メートルに換算した数値を使っている。調査は近畿圏、中部圏、地方4市も対象に行っており、3大都市圏では階数・戸数規模別の集計も行っている。
首都圏では10年、月額1万6116円に設定されていた管理費は、19年には1万9085円と18.4%上昇。同様に修繕積立金は6410円から7826円と22.1%上昇している。
管理費と積立金を足した、月々のランニングコストは2万2526円から2万6911円と4385円上がった。
19年における1平方メートル当たりの月額は管理費272.6円、積立金111.8円という結果になった。
修繕積立基金は41万9913円が60万7811円と18万7898円、駐車場使用料は2万280円が2万3563円と3283円、それぞれアップしている。基金は44.7%と1.5倍近く上がったことになる。
管理費・修繕積立基金は15年以降4年連続で上昇している。管理費は19年、前年の1万7838円から7%も挙がった。新築物件の坪単価は12年以降上がり続けており、東京カンテイでは「新築価格と管理費・修繕積立金との相関性が確認でき、新築価格と連動して管理費・積立金が推移している」とコメントしている。
15年以降の管理費、16年以降の積立金の値上がりについては「大手不動産業者の供給システムが年々拡大し、相対的に維持管理コストがかかるハイグレードマンションの比率が高まったため」と分析した。
また、昨今問題になっているマンション管理業界・建築業界の人手不足による人件費、あるいは建築資材の高騰などによって、修繕工事費用など「建物の維持管理にかかる費用そのものが値上がりする状況にあることが深く影響しているものと考えられる」と推測している。
積立基金の上昇については「積立金の設定額が十分な金額に達していない」。このため「基金でカバーする動きが出ている」と分析した。業者の販売戦略として、融資返済額・管理費・修繕積立金といった「入居当初の月々支払い額を極力抑える工夫を凝らしているため、この影響が基金の大幅な上昇に影響した」との分析も加えた。
(マンション管理新聞:令和2年5月15日付)
投稿日:2020年04月18日 作成者:右田 順久 (1885 ヒット)
新型コロナウィルス対応の特別措置法に基づく緊急事態宣言が4月7日、発令された。7都道府県が対象で期間は5月6日まで。宣言を受け、業務の縮小や一部中止・延期を決める管理会社が一定数に上っている。管理員や清掃といった現場の生命線ともいえる業務の縮小に踏み切るケースもあり、マンション管理業は未曽有の事態に直面した。緊急事態宣言発令を想定した対応については当初、現場業務の休止を打ち出したが、後に撤回するケースも。管理会社も混乱している。 ◇
4月8日午後4時すぎ。都内マンションの管理事務室に、業務委託する大手管理会社から1枚のFAXが届いた。「緊急事態宣言に伴う弊社管理業務のお願い」と題された文書には、宣言が解除されるまで「管理スタッフの配置ができない」、共用部分の各種工事・メンテナンスは延期する」などの対応が記されていた、ごみ出しについては収集日の搬出作業までを必要最低限のスタッフで行う、とされていた。突然の「宣言」に驚いた理事長は在宅勤務中のフロント社員に連絡。できるだけ管理員の勤務を続けてもらうよう求めた。結局、管理員は週明けの13日から時短勤務を実施することで決着がついたが、10日には管理会社側が翻意。管理・掃員共に従来通り勤務を続ける」と連絡があった。
当面の危機を乗り切った形だが、管理組合理事長は「ごみ出しだけは絶対にやってもらわないといけない。マンションが崩壊する」と口にした。
別のマンションでは10日、期間中における管理会社の正式な対応内容が掲示された。日常清掃は管理人が実施する場合を含め、ごみ出し・ごみ置き場の清掃などの一部業務だけを実施する、各種点検は一部延期・中止する旨の内容だった。管理組合理事長は「仕方ない」とあきらめ顔で語った。「コンシェルジュサービス休止。現場スタッフも時短をお願いしたい、と通告があった」と、都内大規模マンションの居住者。6月に予定する総会の日程も決まっていない。
「こんな事態だからこその管理会社。何のために管理委託費を支払っているのか」と、会社側の対応に困惑といら立ちを隠せない。
◇
一連の業務縮小・一部中止は緊急事態宣言を受けた苦渋の選択だ。管理会社も関係会社を含めた社員の安全を守る責任があるが、「縮小・中止」に管理組合の理解が得られないケースがある。マンション管理業は開業始まって以来の緊急事態に陥った。
(マンション管理新聞:令和2年4月15日付)
投稿日:2020年04月09日 作成者:右田 順久 (3226 ヒット)
総会延期措置、管理規約に規定がない場合は理事会決議で延期決定もー。公益社団法人マンション管理センターは3月27日、新型コロナウィルス感染拡大に伴い総会開催に関する問い合わせが多く寄せられているとし、総会開催時の留意事項や延期する場合の手順等を説明した「Q&A」をホームページで公表した。
5月の総会シーズンを見据えた対応で、延期については「災害発生時の場合等にはやむを得ず期間内に総会を開催できない場合もあり得る」と指摘。新型コロナウィルスの感染拡大も、こうした「緊急事態」に準じ総会の開催リスクや組合員の安全も勘案し「期間内の開催が可能か否かが検討されるべき」との解釈をした。
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Q&Aでは①通常総会を開催する場合の留意事項、➁総会を開催しない場合の書面・電磁的決議、③総会開催の延期について、④理事決議による延期決定、➄延期する場合の手続き、⑥延期による区分所有法の解釈、⑦延期した場合の管理委託契約更新手続きーの7項目について解説している。
通常総会を開催する場合は、議決権行使書か委任状による議決権行使方法を推奨する方法が考えられる、としている。直接会場に足を運ばなくても総会を成立・議案を可決できるようにするわけだ。この場合、来場を抑えるため事前に書面による議決権行使を推奨しておく必要がある。Q&Aでは議案に対する意見を文書で表明できる旨知らせておく、などの留意事項も示している。②は総会を開かず書面・電磁的方法を述べた。総会の延期については、「新会計年度開始以後2ヶ月以内に招集しなければならない」と規定されるケースが多い管理組合に言及した上で災害発生時など「やむを得ず期間内の総会を開催できないこともあり得る」と想定。新型コロナウィルスの感染拡大についても、災害時同様、総会の開催リスクや組合員の安全等も勘案し期間内の開催が可能かどうか検討されるべきものだとした。
理事会決議による総会延期決定には「期間を超えて総会を延期せざるを得ないと判断する場合」には理事会決議で総会延期を決定することも考えられるとした。
マンション標準管理規約には総会延期についての規定が設けられていないが、「緊急時の対応」として、解釈した形だ。このため、管理規約に規定がないケースを想定した、総会を延期する場合の手続きも例示。理事会の決議事項として、延期決定のほか、①新役員が就任するまで現役員が職務を行う、②総会で次期収支予算が決まるまでは今期収支予算に従い予算執行をする、➂管理委託契約は従前と同一条件での暫定契約を結ぶーの3項目を示している。
総会の延期措置が区分所有法違反になるかどうかについては、法務省民事局がホームページで公表した見解を引用した。同見解では、新型コロナウィルス感染症の影響で前年の開催から1年以内に区分所有法上の「集会」が開催できなくなった場合の法解釈を示している。
区分所有法では管理者、管理組合法人の場合は理事が年に1回は集会を招集しなければならないと規定されている。事務の報告は「毎年一定の時期」に報告しなければならない、との規定もあるが、見解では「前年の開催から1年内に必ず集会の招集をし、集会において事務の報告をすることを求められているわけではない」。このため、前回の集会から1年以内に区分所有法上の集会が開催できない事態に陥った場合は「その状況が解消された後、本年中」、つまり今年中に集会を招集し、必要な報告をすれば足りる、と判断している。管理規約上の「総会」を招集する管理組合理事長は一般的に区分所有法上の管理者に就任する決まりになっているため、区分所有法上の「集会」は管理規約上の「総会」にあたる。総会延期は管理規約違反にはなってしまうが、今年中に「集会」を開けば区分所有法違反にはならないということだ。
管理委託契約の更新については、一般社団法人マンション管理業協会が2月27に公表した「マンション管理会社の感染症等流行時対応ガイドライン」で示した契約更新方法例を参考にした。「緊急時の対応として理事会で従前と同一条件での暫定契約を締結することについて決議する方法が考えられる」とした上で、理事会決議により契約を結ぶことについて管理会社との事前協議を行い、理解を得ることが大切だとしている。
※以上の詳細については、マンション管理センターのHP(以下のアドレス)をご参照下さい。 https://www.mankan.or.jp/cms-sys/wp-content/uploads/2020/03/20200327-CORONA-QA.pdf
(マンション管理新聞:令和2年4月5日付)
投稿日:2020年04月01日 作成者:右田 順久 (1375 ヒット)
東京都議会第1回定例会は3月16日、都市整備委員会が開かれ、4月に全面施行するマンション管理条例で知事が策定する決まりの「東京マンション管理・再生促進計画」(素案)などについて質疑があった。
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森口つかさ都議(都ファースト)は、素案の届け出制度の強化などについて質問。マンション管理適正化法・マンション建替え円滑化法の改正法案を見据えた見解も尋ねた。
栗谷川哲雄・民間住宅施策推進担当部長は、4月から「分譲マンション総合相談窓口」の相談員を2人に増員し、月1回土・日曜の開設や毎週水曜日の開設時間の延長による体制強化を挙げた。
法改正については、「改正マンション管理適正化法に基づく計画との整合性の検討や、敷地売却制度等に係る効果的な支援策の検討、調査など改正法案の内容を踏まえ必要となる準備を進めていく」と答弁した。中村ひろし都議(立憲民主)は、成果指標で要届け出割合を2025年度末に80%とした理由や、耐震診断の実施率(おおむね100%」の把握・達成方法、空き家問題への対応などを質問した。栗谷川部長は、届け出制度を先行している豊島区が「制度施行5年間で7割程度であったことなどを参考に設定した」と述べた。 耐震診断の実施は届け出内容等で測定し、現行の派遣事業で働き掛けると答弁したが、中村都議は届け出の目標が80%なら「全体でも80%ではないか」などと指摘した。
空き家問題は、従来の相談対応のほか現行の『マンション管理ガイドライン』を3月に改定して作成する『マンション管理ガイドブック』で「相続されない場合の対応を記載するなどし、意識向上を図る」と答弁した。曽根はじめ都議(共産)は、素案の「まちづくりと連携した老朽化マンション等の再生」で、再開発等にマンションが巻き込まれ「区分所有者の権利を不当に侵害することがないよう歯止めが必要だ」と指摘した。管理状況の届け出等に関する事務の区市町村への委譲に伴う交付金などに触れ、昨年の台風19号による浸水被害など防災の問題や取り組みについて質問した。栗谷川部長は、地下の電気設備が浸水した問題を踏まえ、同ガイドブックで「風水害対策についての解説を掲載する予定」と述べた。
届け出事項の防災への取り組みでは、管理組合の了承を得た上で都のマンションポータルサイトに事例を掲載し「普及啓発を図る」と答えた。交付金は「対象事務を区市町村で処理した件数に応じて都から事務処理特例交付金として支払うことになっている」と答弁した。
奥澤高広都議(東京みらい)は「消費者の普及啓発」や「地域コミュニティーの形成」を増やすための取り組みなどを質問。栗谷川部長は、3月に『安心して住宅を売買するためのガイドブック(マンション編)』を改定し「管理や取引に関する知識向上に取り組む」と述べた。地域コミュニティーの形成は防災同様、同サイトへの事例の掲載などを挙げた。 菅野弘一都議(自民)は老朽マンション対策で都の「マンション再生まちづくり制度」の普及が重要だと指摘。栗谷川部長は「管理組合が決議等の手続きを円滑に進められるよう支援し再生を促進する」などと述べた。
(マンション管理新聞・令和2年3月25日付)
投稿日:2020年03月16日 作成者:右田 順久 (1235 ヒット)
東京都の「管理状況届け出制度が4月1日スタートする。都マンション課によれば、昨年3月に制定された条例で届け出が義務付けられたマンション(要届け出マンション)は約1万4000棟。
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届け出方法は2通り。インターネットから都の「管理状況届け出システム」にログインし届け出事項を入力するか、マンションが所在する区市町村の担当窓口に届け出書を郵送・持参する。
届け出書は「マンションポータルサイト」からダウンロードできるが、都ではインターネットによる届け出を推奨している。
都では3月中旬にはシステムにログインするためのID・パスワード、届け出書、届け出先となる区市町村担当窓口などを記載したパンフレットを要届け出マンションに郵送する。
届け出期限は今年9月30日。届け出は5年毎に行う。内容に変更があった場合は都度届け出が必要だ。正当な理由がなく届け出を行わない場合は管理組合に指導・勧告が行われる場合がある。
同課によれば、郵送は棟単位で行っている。複数棟で構成される団地は、全体管理組合が「一括で届け出を行っても構わない」(同課)としている。届け出は「要届け出マンション」以外のマンションも任意で行える。この場合、ホームページからダウンロードした届け出に必要事項を記入し、地元の区市町村に持参・提出する。届け出が義務化されているのは1983年以前に新築された、住戸数6戸以上のマンション。
(マンション管理新聞・令和2年3月15日付)
投稿日:2020年03月10日 作成者:右田 順久 (2323 ヒット)
一般社団法人マンション管理業協会は2月27日、新型コロナウィルスの拡大に伴い、感染症対等拡大時の管理委託契約に基づく受託業務やマンション管理適正化法上の対応、考え方について示した「マンション管理会社の感染症等流行時対応ガイドライン」を策定・公表した。
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2009年に策定した「新型インフルエンザ対策ガイドライン」を改定したもの。ガイドラインでは居住者の安全確保として「場合によっては集会などを延期、中止することもやむを得ないことをアドバイスする必要がある」と指摘。管理組合を対象にした、マンション管理適正化法の説明会開催についても「法令順守を優先するあまり居住者の安全を脅かす結果となることは管理会社の姿勢としてふさわしいものではない」とした。
ガイドラインによれば、管理委託契約の締結で「従前と異なる条件」の場合はまず、従前と同一条件による暫定契約を結び、事態鎮静後に重説会を開催し新たな契約を結ぶ。
重説会は「法令上必要な業務ではあるが居住者等の安全を確保するための緊急事態であること」などを管理組合に説明し、協議の上「管理組合からの申し出として延期することはやむを得ない」としている。暫定契約の締結、重説会延期についてのひな形も示した。
【注記】重説会とは、重要事項説明会のこと。(マンション管理適正化法第72条をご参照)
(マンション管理新聞・令和2年3月5日付)