投稿日:2019年05月02日 作成者:右田 順久 (3906 ヒット)
既存分譲マンションにおける「駐車場余り」問題を受け東京都は、都条例で定めた付置義務がある駐車場台数を緩和する場合の認定基準等を整理し、市街地建築部長名で、都内の特定行政庁建築主務部長宛に3月25日付で通知した。
◇
マンション内の駐車場が利用されていない場合、基準をクリアすれば、都の条例で義務付けられた敷地内駐車場の台数を減らすことが可能になる。都の駐車場条例では、既存建物に対して利用実態に応じた付置義務の緩和を認めているが、既存マンションにおける同規定の運用を、今回「技術的助言」として具体的に定め、通知した。
通知では既存マンションの駐車場について、居住者の高齢化や自動車保有に対する意識変化等に伴い「利用率が低下している」と分析。その一方、付置義務を満たすために設置されるケースが多い機械式駐車場に対し「安全対策の強化や定期的な保守点検の実施に伴い維持管理費用の負担がマンション管理の課題になっている」と指摘している。このため利用実態に応じた駐車施設の維持管理が可能になるよう、設置義務がある駐車場台数を緩和する際の基準を提示した、としている。
付置義務がある駐車場台数を減らすことができるのは、既存駐車場の利用実績が付置義務のある駐車場台数を上回っていない。既存駐車場を撤去する部分について、跡地の利用計画が関係法令に適合している、などといった条件を満たしているケース。
管理組合は、都が作成した「駐車場管理運営計画」等に必要事項を記入し、特定行政庁に事前協議を申請する。協議で基準をクリアしている、と判断されれば事前協議は終了し、管理規約や使用細則の改正を行った後、正式な申請を行う。「技術的助言」には、管理規約の使用細則の改正例も提示されている。「技術的助言」は都の「マンションポータルサイト」で閲覧できる。
(マンション管理新聞:令和元年5月5日付、4月25日合併号)
投稿日:2019年04月06日 作成者:右田 順久 (1372 ヒット)
1983年以前に建築された6戸以上のマンションに管理状況の届け出を義務付ける「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」が3月28日の東京都議会本会議で可決・成立し、翌29日に公布・施行された。管理状況の届け出に関する規定は来年4月1日に施工する。具体的な届け出事項や方法、内容の更新時期などは、規則で正式に定める。
本会議の討論では古城将夫(公明)都議が同条例に言及、都市整備委員会で2019年度に実施すると答弁があった、管理組合が機能していないマンションに専門家を派遣するモデル事業について「老朽化に直面する多くのマンションで建て替えに向けた合意形成が進むよう、管理組合への粘り強い支援を求める」と述べた。
(マンション管理新聞:平成31年4月5日付)
投稿日:2019年03月15日 作成者:右田 順久 (1164 ヒット)
社会資本整備審議会・産業分科会不動産部会(中田裕康部会長)の第38回会合が3月1日、東京都内で開かれた。
この日は1992年以来、27年ぶりの策定となる「新・不動産業ビジョン2030年(仮称)」の概要と骨子案が示された。今後の業態の在り方として「開発・分譲」には、分譲時に将来の管理費・修繕積立金について的確な情報提供を行うよう求めた。
「管理」には、資産価値の維持・向上に向けた適切な管理サービスの提供、コミュニティ形成や高齢者の見守りといった付加価値サービスを通じた住環境の向上・管理情報の蓄積化・適切な開示を促している。
骨子案は大筋で承認され、3月28日開催予定の次回会合で取りまとめを行う方針だ。 ◇
「不動産業ビジョン」は、市場の発展を持続的に確保していくために官民共通の目標や、不動産業に関わる各事業者の役割などを示している。
骨子案では、マンション管理の現状として建物と居住者の二つの高齢化が進み、修繕衝立金不足、管理組合役員のなり手不足が課題になっている、とし指摘。
こうした現状を踏まえ、適切な管理、修繕・改修で長寿命化や付加価値化を図り、流通・活用を促す「ストック型社会の構築」など、7項目の官民共通の目標を設定した。
今後約10年の間に重点的に検討する政策課題としては、「ストック型社会」など10項目を提示。「ストック型社会」では、不動産の管理状況・ガバナンスを考慮した不動産評価、マンションの管理状況の把握などを挙げている。他では、不動産取引における災害リスクや不動産の性能、管理状況に係る情報提供の在り方など課題としている。
(マンション管理新聞平成31年3月5日付)
投稿日:2019年02月28日 作成者:右田 順久 (1412 ヒット)
1983以前に新築された、6戸以上の分譲マンション管理者に管理状況の届け出を義務付ける東京都の条例案が2月20日に閉会した都議会定例会に提出された。
本会議での議案説明、常任委員会での審議を経て、3月28日の本会議で可決・成立する見通しだ。都によれば、年度内の公布・施行を見込んでいる。管理状況届け出制度は、来年4月1日にスタートする予定だ。
◇◇◇
条例案で「都知事が定める」とされた、「管理不全」を予防し適正な管理を実現するための施策を具体化・推進するための総合的な計画、管理の適正化に関する指針は、新年度に入る4月以降に策定・公表する。
条例案の作成に先立ち都が行った意見募集(パブリックコメント)には13通・50件が寄せられた。管理組合だけでなく、理事会の定義を求める意見もあり、都は理事会の役割等について「指針において記載することを検討する」旨の考え方を示した。
条例は分譲マンションの管理不全を防ぎ、適正な管理を促進するのが主な目的。関係者の協力のもと、管理主体の管理組合に対して「行政が積極的に関わり」と明文化している点が特徴だ。東京都に加え、管理組合・区分所有者、マンション管理士、マンション管理業者、分譲事業者の責務を規定した。罰則規定はない。
管理組合の責務は、管理の主体としてマンションの適正な管理・社会的な機能の向上に向けて取り組むよう努めなければならない、と規定されている。区分所有者は、「管理組合の運営に参加するよう」求められている。管理組合の留意事項として、管理状況の届け出項目に当たる運営体制の整備、管理規約の設定、総会開催と議事録作成、管理費・修繕積立金の額・徴収方法の規定、修繕の計画的な実施が定められた。管理状況の届け出は、原則的にマンションの管理者が行う。届け出対象外でも任意の届け出はできる。
知事は必要な範囲でマンションの調査、助言ができる。届け出がない場合や内容が事実と異なる、助言だけでは管理状況の悪化を防ぐことが困難なときは指導・勧告ができる。条例案では、すでに同趣旨の管理状況届け出制度を運用している自治体は都の制度の対象外になる、と定めたが、各自治体は都の制度適用を求めることも可能だ。
(マンション管理新聞・平成31年2月25日付)
投稿日:2019年01月09日 作成者:右田 順久 (1359 ヒット)
国土交通省は12月21日、2019年度予算の決定概要を発表した。住宅局は引き続き既存ストックの維持・向上促進や地震対策に向けた事業を行う。
◇
マンション政策室は「マンション管理適正化・再生推進事業」を継続。18年度の約9000万円から1・36倍の1億200万円を計上した。例年同様、管理組合運営のモデルとなり得る先進的な取り組みなどに対し補助金を交付する。自治体が行うマンション実態調査等に対しても支援を行う方針だ。
住宅生産課は「安心R住宅」制度などを含む「住宅ストック維持・向上促進事業」を引き続き実施し、リフォーム市場の活性化や中古住宅流通を促進する。予算額は18年度比較比0・88倍の8億5500万円。「長期優良住宅化リフォーム推進事業」は同期比1・07倍の45億円。マンションに対しては長期修繕計画の作成支援やリフォーム支援を行い、マンション政策室が管轄する。
消費税率引き上げに際し「住宅市場安定化対策事業」「住宅需要変動平準化対策事業」として計2085億円を付けた。新たに「次世代住宅ポイント制度」を創設し、耐震や省エネ、家事負担軽減等に資する新築住宅の取得やリフォームに対し、防災商品や子育て関連商品などと交換できるポイントを付与する。対象は19年10月以降に引き渡す住宅。指定された耐震等級やエネルギー消費量等級、劣化対策等級を満たす新築住宅を購入した場合、戸当たり30万ポイントを支給。長期優良住宅やネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)の場合にはさらに5万ポイントを加える。リフォームの場合、断熱やバリアフリーに係る改修などを行った際、部位や設備に応じて同30万ポイントを上限に付与する。
建築指導課は社会資本整備総合交付金等の内数で「住宅・建築物安全ストック形成事業」を実施。同事業内に新たに「ブロック塀等の安全確保事業」を盛り込む。自治体が指定した避難路沿道ブロック塀等に係る耐震診断や除却、改修に地方公共団体が補助制度を設けている場合、国と地方公共団体、民間が1メートル当たり8万円を上限に工事費の分の1づつを交付する。閉じ込めや長期運転停止に係るエレベーターの地震対策にも取り組む。
観光庁は違法民泊の疑いがある物件を特定できるシステムの構築に乗り出す。海外の無登録仲介サイトにおける掲載物件情報を集めてそこから違法性が疑われる物件を抽出、リスト化するシステムを整備する。予算は同比1・78倍の1億9300円。
(マンション管理新聞:平成31年1月5日号発行)
投稿日:2018年12月19日 作成者:右田 順久 (1707 ヒット)
NEWS 1 「民泊」スタート 禁止が大多数
住宅宿泊事業法に基づく「民泊」が6月15日、始まった。公益財団法人マンション管理センターが7月に公表した「民泊対応状況管理組合アンケート調査」の結果では全体の9割以上が「民泊は全面的に禁止した」と回答。管理規約で禁止したのが最多で7割以上だった。民泊を許容した管理組合はなかった。民泊を禁止の理由のトップ3は「騒音・ごみ廃棄など迷惑行為」「防犯・安全面」、「不特定多数の立ち入りによるいざこざ」の懸念だった。
NEWS 2 国交省 大規模修繕で初の実態調査
国土交通省は5月11日、「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」結果を発表した。管理組合の利益と相反する立場に立つ「不適切コンサルタント」問題を踏まえ、大規模修繕工事の設計・管理業務を受託する設計コンサル業者を対象に、業務の内容や業務量などを尋ねた。調査ではコンサルの業務内容別や工事金額別にみた業務時間などを明らかにしており、同省は「設計コンサルや施工会社から提出される見積もり内容と調査結果とを比較して事前に検討することにより、適正な工事発注などへの活用が期待できる」としている。
NEWS 3 地震・豪雨・台風 各地で被害も
6月から9月にかけて大阪北部地震、西日本豪雨、台風20・21号、北海道胆振東部地震と立て続けに自然災害が発生し、マンションでも被害が出た。最大震度6弱を記録した大阪北部地震では、外壁のひび割れをはじめ、数棟で「中破」があった。台風20号では、兵庫県西宮市の団地型分譲マンションの屋根部分に敷設された防水材が半数以上剥がれ、一部が真下の駐車場に落ちるなどした。記録的な暴風で近畿地方を横断した台風21号では、大阪市港区のマンションで飛来物が窓ガラスを割って侵入し、居住者が亡くなる事故も起きた。最大震度7の北海道胆振東部地震では、停電によるエレベータ停止や断水があった。
NEWS 4 各自治体が耐震診断結果を公表
東京都は3月29日、耐震改修促進法に基づき、都が所管する耐震診断義務化建築物の耐震診断結果などを公表した。2012年4月から条例で特定緊急輸送道路沿道の建築物に耐震診断を義務付けて未実施物件名を公表していたが、耐震診断結果は含まれていないため公表は初めてとなった。都に報告した分譲マンションは17区10市で概ね91件に上り、このうち震度6強から7程度の大規模地震で倒壊・崩壊する「危険性が高い」とされるのは6件、「危険性がある」とされるのは13件だった。
NEWS 5 『団地型』で敷地売却が可能に
国土交通省は3月30日、「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」の施行規則を改正した。同法に基づく敷地売却制度を活用した団地型マンションの再生の円滑化を図る目的で、一団地内にあるよう除却認定マンションと敷地を一括して全部買い受けようとする場合に、買い受け人に対して買い受け計画の認定申請時に他棟の申請予定時期を記載するよう定めた。団地型のマンション標準管理規約・コメントも同日改正し、敷地売却組合の設立認可までに必要な場合は団地修繕積立金を取り崩して経費に充当できるよう追記した。団地型マンションの敷地売却制度の構築は、昨年8月から「住宅団地の再生のあり方に関する検討会」で進められており、中間取りまとめとして、今回の改正が行われた。
NEWS 6 管理状況届け出制度 東京都が2月にも条例案
東京都は11月26日、都庁で「マンションの適正管理促進に関する検討会」の最終会合を開いた。管理状況届け出制度の概要などを盛り込んだ「東京におけるマンションの適正な管理の促進に向けた制度の基本的な枠組み」について、最終まとめ案を大筋で承認。30日に最終まとめ案を公表した。都は来年2月の都議会に条例案を上程する方針。
NEWS 7 金融インフラ整備へ支援機構が勉強会
住宅金融支援機構は7月26日、「マンションの価値向上に資する金融支援のあり方勉強会」を設立すると発表した。勉強会は12月4日までに分科会を含めて計4回開催した。機構は、共用部分のリフォーム融資は「民間金融機構の取り組みが限定的」と指摘。「管理組合とマンション管理に関する市場関係者の間に情報の非対称性が存在する」との認識も示し。適切な修繕工事の実施に当たっては、「金融インフラの整備が課題」とした。
NEWS 8 熊本地震 全15棟の公費解体が完了
熊本市の被災マンション15棟(件数ベースで11件)の公費解体が10月22日に完了した。11の件数のうち、敷地の売却が判明しているのは4件、公費解体ではないが「自費解体」後に敷地を売却したマンションは5件。建替えを決めたのは2件。被災マンションに対する支援では、管理組合団体やマンション管理士会、専門家らが支援に携わった。
NEWS 9 標準管理委託契約書改訂
国土交通省は3月9日、マンション標準管理委託契約書・コメントを改訂した。従前は義務だった理事会・総会議事録案の作成について「管理組合が協力を必要とするとき」と限定し「協力を必要とするときは、協力方法について協議する」との条文を加え、事前協議で業務範囲や内容を決めるように改めた。
NEWS 10 神戸市 『超高層』の研究会設置
神戸市は9・11月、市役所で「タワーマンションのあり方に関する研究会」を開いた。11月の最終会合では修繕積立金の不足やコミュニティーの希薄化などの検討課題への対応策案を報告。管理状況の把握などの対応策案として、届出に基づき認証する「神戸版タワーマンションマネジメント制度」の素案が示された。
*マンション管理新聞(平成30年12月15・25号付)より抜粋。
投稿日:2018年11月08日 作成者:右田 順久 (2342 ヒット)
国土交通省は、1981年5月31日以前に建築確認申請を受けた、いわゆる「旧耐震基準」で、一定の高さを有する塀に対し、耐震改修促進法に基づく耐震診断を義務付ける。
今年6月に発生した大阪北部地震で、女児が倒壊したブロック塀の下敷きになり死亡した事故を受けた措置。同省は同法施行令や施工規則を一部改正し11月中にも公布、来年1月1日に施行する予定だ。改正に係るパブリックコメントは11月10日まで募集している。
◇
同法施行令4条に規定する、自治体が定める緊急輸送道路曽沿いなどに建ち倒壊した際に当該道路の通行を妨げる恐れのある「通行障害建築物」の要件を改正。改正により、当該道路に面する部分原則長さ25メートル超で、倒壊したときに道路の半分超をふさぐ恐れのある塀も耐震診断が義務付けられる。分譲マンションも対象だ。
塀の耐震化に関する規定はこれまでなく、2006年の改正耐震改修促進法に基づく「基本方針」で、地方公共団体に対しブロック塀の倒壊防止に係る改善指導に努めるよう促すだけにとどまっており、同省は今年8月の社会資本整備審議会で、同法の枠組みを生かした塀の耐震化を推進する仕組みを検討していた。今回の改正についてはあくまでも災害時などの避難・救助や物資輸送を円滑に行う目的で、建物と建物の間に設置している「隣接塀」に係る義務化は「今のところ考えていない」(建築指導部)という。
(マンション管理新聞:平成30年11月5日付)
投稿日:2018年10月15日 作成者:右田 順久 (1458 ヒット)
東京都は9月25日、1983年以前に建設された6戸以上のマンションに管理状況の届け出を求める制度を盛り込んだ「東京におけるマンションの適正な管理の促進に向けた制度の基本的な枠組み案」を公表し、意見募集を始めた。10月24日まで受け付ける。
◇
案は3月から開催中の「マンションの適正管理促進に関する検討会」(齋藤広子座長)で議論されており、都は寄せられた意見を参考に最終まとめを行う。
公表された案は第5回検討会で示された内容とほぼ同様。5年ごとに管理状況の届け出を求める。制度開始後、1984年以降に建設されたマンションも順次届け出対象にする。
届け出項目は「管理不全を予防するための必須事項」とした、管理組合や管理規約、管理費・修繕積立、大規模修繕実施などの有無。
「無」が一つでも当てはまる場合、「管理不全の兆候が疑われる」マンションと位置付け、都や市町村が個別相談やアドバイザー派遣など、適正管理に係る支援を実施する。
「管理不全」とは「マンションの維持・管理や修繕が適切に行われず、外壁が落下するなど周辺に悪影響を与えている状態」と定義した。「管理不全の兆候」とは「管理運営における体制の未整備や資金不足等により、マンションの維持・管理が適切に行われておらず、そのまま放置すると管理不全に陥る恐れがある状態」を指す。
都や管理組合、マンション管理士、管理会社らマンション管理に関わる各主体の責務と役割も明記。管理組合は「管理の主体として、法令等の定めるところに留意し適正な管理を行う」「マンションの社会的な機能の向上に資する取り組みを行うよう努める」役割・責務がある、とした。管理業者は「受託業務を適切に実施するとともに、管理組合の運営等に関し、専門的見地から提案や助言を行うしとしている。
◇
意見募集は郵送やFAX、電子メールで受け付ける。 問い合わせ先:東京都マンション施策推進担当☎03(5320)4933へ。
(マンション管理新聞:平成30年10月5日付)
投稿日:2018年09月13日 作成者:右田 順久 (1327 ヒット)
一般社団法人日本マンション管理士会連合会(日管連、親泊哲会長)は、8月24日付で裁判外紛争解決手続き利用促進法(ADR法)に基づく民間ADR事業者の認証を受けた。29日に開いた第10回の定時総会で正式に報告した。2009年の検討開始から9年、ようやく悲願の認証が実現した。
◇
認証取得で日管連は民間の認証ADR事業者として、管理運営などのトラブルについて当事者間の調停・あっせんといった、和解の仲介を行う。調停に加え、裁判などの一般的な法的手続きと異なり、実務経験が豊富なマンション管理士という「専門家」が間に入る点が最大の特徴で、紛争を解決に導く上での強みだ。
認証に先立ち、日管連ではADRを実施する専門家としての研修と適性試験を実施。6月30日時点で会員管理士会所属管理士80人が実施予定者に名乗りを上げている。
実際の業務は日管連内に設置した「マンション紛争解決センー」(重森一郎センター長)が手掛ける。
認証ADR事業者の紹介などを行う「かいけつサポート」ホームページによれば、同センターが扱う紛争の分野は「マンションの管理に関する紛争」。種類・範囲は、管理組合管理部分の保安・保全・保守・修繕・変更・運営・清掃・消毒・ごみ処理、修繕積立金の運用など全13項目(表参照)。
管理組合や区分所有者らが制度を利用して紛争を解決したい場合、申込者が申し込み手数料3万円、期日費用として1期日につき当事者双方がそれぞれ5000円を負担。合意が成立した場合は1万円を負担する。相手方がADRの手続きに合意するのが条件で、合意がない場合は手続きは行えない。
裁判外紛争解決手続き(ADR)は、民事上の紛争を、当事者と利害関係がない専門知識を持つ第三者が双方の主張を吟味し、和解による解決を図る。07年に施行されたADR法では、
ADRを行う民間事業者を法相が認証する仕組みが設けられた。認証を受けるには法が定める16項目の基準に適合するほか、業務を行うに際しての必要な知識や能力、経済的な基礎があるかどうかなども問われる。
8月30日までに、157業者が認証を受け、うち152事業者が活動を行っている。
マンション管理関係では08年12月、NPO法人福岡マンション管理組合連合会が認証を取得している。
◇
日管連がADR法に基づく認証取得の検討開始を正式に決めたのは、09年の定時総会だ。検討開始から取得までに9年かかったことになる。
取得までに時間を要した背景について、関係者は「日管連が全国組織だった点が要因の一つでは」と話す。
現在認証を受けている事業者は、公益財団法人以外では各地の弁護士会や司法書士会・土地家屋調査士会・社会福祉労務士会などが多く、全国組織の認証は少ない。
全国組織の場合、地域団体と異なり、基本的に全国が事業対象地になる。この関係者は「このため、適正な業務が実施できるのかチェックが相対的に厳しくなり、審査が長期化した可能性があるのでは」と推測している。
<扱う紛争分野と種類・範囲>
〇マンションの管理に関する紛争
(1)組合管理部分の保安、保全、保守、修繕、変更、運営、清掃、消毒およびごみ処理
(2)マンション管理適正化法第103条に定める、宅地建物取引業者から交付を受けた設計
図書の管理
(3)組合管理部分に係る火災保険その他の損害保険に関する業務
(4)マンションの長期修繕計画の作成または変更及び長期修繕計画書の管理に関する業務
(5)マンションの修繕等の管理に関する履歴情報の整理および管理
(6)区分所有者が管理する専用使用部分について、管理組合が関与することが適当である
と認められる管理行為
(7)マンションの修繕積立金の運用
(8)マンションに関連する官公署、町内会等との渉外業務
(9)マンションおよび周辺の風紀秩序および安全の維持、防災ならびに居住環境の維持お
よび向上に関する業務
(10)マンションに関連する広報および連絡業務
(11)建物の建て替えに係る合意形成に必要となる事項の調査に関する業務
(12)管理組合の解散時における残余財産の清算業務
(13)その他建物ならびにその敷地および付属施設の管理に関する業務
(マンション管理新聞:平成30年9月5日付)
投稿日:2018年09月13日 作成者:右田 順久 (1761 ヒット)
いわゆる「ヤミ民泊」が行われているとして、東京都内の管理組合が区分所有者に対し営業の差し止めを求めた訴訟の判決が8月9日、東京地裁であった。浦上薫史裁判官は管理規約に基づく差し止めを認める一方、弁護士費用97万2000円の氏H来を命じる判決を言い渡した。区分所有者が控訴しているかどうかは不明。
◇
判決によれば、訴えを起こしたのは東京都港区の管理組合。昨年5月、民泊の営業差し止めと弁護士費用147万円の支払いを求めて東京地裁に提訴した。
民泊が発覚したのはおととし1月ごろ。区分所有者が「Airbnb」のホームページで宿泊利用者を募っていた。管理組合はこの年の4月に管理規約を改正。以前から事務所としての使用は認めていたが、専有部分の用途を定めた条文に民泊を事実上禁止する規定を付加。居室を第三者に貸与する場合の、第三者への規約・使用規則の順守義務を定めた条文を新設した。
提訴直前の5月には、規約違反に基づき提訴する場合の弁護士費用・差し止め費用の請求について定めた規定を新設する対応を施している。
差し止め訴訟は、管理規約違反と区分所有法違反の2本立てで行った。
管理組合側は①民泊により素性の不明な不特性多数の外国人が頻繁に出入りするようになった➁夜間大声で話していてうるさいと苦情があった③ごみを分別せずまとめてゴミ置き場に捨てた④オートロックシステムにもかかわらず民泊で不特定多数が出入りするようになったーといった点を問題視。これらの行為から、民泊は「共同の利益に反する行為」だと指摘し、区分所有法57条1項に基づく差し止めも求めた。区分所有者側は、民泊を禁じるなどの管理規約の改正は「区分所有法31条の『特別の影響』に該当し」、当該区分所有者の承諾が必要だと訴えた。
◇
浦上裁判長はまず、当該居室では「不特定多数の者を対象として、その専有部分を宿泊や滞在の用に供し、または短期間の貸与をしていたと認められる」とし、「民泊」が行われていた、と指摘。区分所有者の行為は「管理規約に違反する」と認定した。
また「民泊を否認するのみで、居室をどのように使用しているかについて明らかにしようとしない」と述べ、法廷における区分所有者側の姿勢を批判。民泊が発覚した際、管理組合に「今後は行わない」と述べておきながら、その後も民泊を募集していた点も併せて「被告は、今後も管理規約に違反して不特定多数の者に対して居室を短期間の宿泊や滞在の用に供する可能性が高い」と結論付け、差し止めを認めた。
管理組合が主張した、民泊による騒音などの迷惑行為が「共同の利益に反する行為」に該当するするかどうかについての言及はなく、認められた差し止めは、管理規約違反を根拠としたものだ。
区分所有者が主張した「特別の影響」については、管理組合の改正が「マンションの居室を民泊または短期間の賃貸借に供することを禁止する規定であって、被告の権利に特別の影響を及ぼすものではない」とし、「被告の承諾は不要」だと結論付けた。
弁護士費用は、着手金32万4000円全額を認定。報酬については98万円の請求に対し「報酬は協議して決定するとされており、その額は64万8000円を超えるとは言えない」とし、計97万2000円と年5%の遅延損害金の支払いを命じた。弁護士費用の支払いについては仮執行お認めている。
(マンション管理新聞:平成30年8月25日付)