『カスハラ対応』が最多、2位は「業務範囲の明確化」(標準管理委託契約書反映状況)~マンション管理業協会のマンション管理トレンド調査~
マンション標準管理委託契約書、反映する内容は「カスタマーハラスメント対応」がトップ。一般社団法人マンション管理業協会(管理協)が7月19日に公表した「マンション管理トレンド調査2024」の結果概要で、昨年9月に改訂された同契約書を管理組合に提案している場合の、契約書への反映内容を尋ねた設問があった。2位は「管理業務範囲の明確化」だった。管理計画認定制度では認定を受けたマンションがある管理会社が前回比で倍増している。
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調査は6回目。前回同様、IT活用、管理計画認定制度の取り組み状況などを尋ねている。前回から「長期修繕計画における修繕積立金不足」・「複合用途型・タワーマンション」への各対応を追加し、今回は昨年9月に改訂されたマンション標準管理委託契約書の反映状況等を尋ねた。今年4月1日~5月17日、会員348社を対象に実施し333社が回答した。回答率は95.7%。 ◇◇
【マンション標準管理委託契約書の反映状況】
昨年9月に改訂された同契約書の提案状況は102社が「積極的に提案している。(改訂済み)、104社が「現在提案中」(未改訂)と答えた。契約書に反映する、もしくは予定する項目は「カスタマーハラスメント対応」(164社)が最多(表➀を参照)。2位は「管理業務の範囲の明確化」(160社)だった。「管理組合の組合員から管理会社への要望がますます過剰になっていくのではないかと危惧しているといった意見が上がった。通知義務(13条)コメントの「感染症・認知症を知った場合の通知」について「内容に対応する条文の例も、今後、標準管理委託契約書に追記いただきたい」とする意見もあった。
【長期修繕計画における修繕積立金不足の対応】
直近1年間に管理物件に提案した施策ついて尋ねた。最も多かった回答は前回同様「修繕積立金」値上げ。「修繕工事の見送り、仕様ダウン等」が4位から3位に浮上した。(表②を参照)計画期間内資金ショートが発生する管理組合に今後提案を検討している施策も、トップは積立金の値上げ。以下長計見直し(修繕終期の長期化等)、修繕工事の見送り・仕様ダウン等と続く。
【複合用途型・タワー型マンションへの対応】
管理上の問題・課題は、前回同様「高度な要求に対応できる営業担当(フロント)の配置」「特殊な設備の点検・修理」「高度な要求に対応できる管理員・コンシェルジュの配置」がトップ3。複合タワーマンションでは「商業と住宅では求める管理レベルが異なり、利害関係が一致しないことが多々ある。今後外壁補修の時期等でも協議が整わない可能性が高い」とする意見もあった。
【IT活用】
「導入済み」が最も多かった回答は前回同様「ウェブ会議システムの導入」で233社。前回比7社増。IT重説・書面の電子化は「ITを活用した重要事項説明」導入済みが48社で最多。
【管理計画認定制度】
会員の18.4%に当たる64社が「すでに管理計画認定制度を受けたマンションがある」と回答。前回の30社から倍増した。「特に検討していない」は前回比7社増の86社。理由は「管理計画認定が取れそうにないため」が28社で最多。重要事項調査報告書に制度認定の有無欄を設けているのは49社にとどまった。
【管理計画評価制度】
前回比21社増の68社が「すでに管理適正評価制度に登録したマンションがある」と答えた。 重要事項調査報告書に制度登録の有無欄を設けているのは35社。同制度の登録と管理計画認定申請に際し、管理協の「ワンストップサービスを利用している」と答えたのは35社。25社が「両制度を別々に申請している」と答えた。
【働き方改革等】
110社が「新型コロナ対応により新たな取り組みを始めた」、139社が「すでに取り組んでいた」と答えた。
➀標準管理委託契約書に反映した(する)内容
回答(会社数) | 項目 |
164 | カスタマーハラスメント対応(標準委託契約書第8条、12条) |
160 | 管理業務範囲の明確化(同2条) |
137 | 書面の電子化、IT総会・理事会等DXへの対応(同25条他) |
130 | 働き方改革に関する対応(別表第2) |
119 | 居住者の高齢化・感染症まん延等への対応(同9条、13条) |
99 | 現金収納業務の追加(別表第1) |
9 | その他 |
*上記の件数は複数回答を含む。 |
②長期修繕計画における積立金不足対応として直近1年間に行った提案
回答24年度 | 回答23年度 | 提案の内容 |
300 | 297 | 修繕積立金の値上げ |
235 | 222 | 長期修繕計画の見直し *修繕終期を長期化等 |
163 | 145 | 修繕工事の見送り、仕様ダウン等 |
151 | 162 | 管理費支出削減分を修繕積立金口に振り替え *電子ブレイカー・LED等 |
122 | 102 | 共用部分リフォームローンの活用 |
119 | 111 | 駐車場の外部貸し等 *収益事業 |
62 | 68 | 管理費支出削減分を修繕積立金口に振り替え *管理仕様ダウン |
37 | 45 | 管理費支出削減分を修繕積立金口に振り替え *管理委託費の値下げ |
10 | 12 | 特になし |
9 | 10 | その他 |
*上記の回答件数は会社数 *上記の件数は複数回答を含む。 |
(マンション管理新聞:令和6年7月25日号の記事より掲載)