“また保険料改定”~10月から築30年以上で2倍以上に値上がりも(東京海上日動を除く大手で)~新商品に期待も<管理内容を保険料に反映>~
火災以外のリスクにも幅広く対応するマンション総合保険。今年10月以降、保険料の大幅な値上がりが予定される一方、マンション管理状況を保険料に反映する新商品も始動する。「10月からのマンション保険は新次元に突入する格好。管理組合は9月末までに見直しの必要性を検討して欲しい」と代理店はアドバイスしている。
「一見、目をを疑うような金額も有りますが、これが10月からの現実」とセゾン保険サービスの岩崎正裕マネージャーは指摘する。 同社の協力を得て作成した、今年10月以降の損害保険の5社の築年別保険料は表(割愛)の通り。 前年対比では、例えば築20年は東京海上グループ2社を除く3社で15~71%値上がりする。3社は昨年も保険料率等を改定しており、2年連続の改定。一部は築浅で値下げとなるが、経年マンションの値上げ幅の大きさが目立つ。
新築と築35年を比較すると、三井住友海上は5倍、損保ジャパン日本興亜は4倍と、経年による保険料格差も拡大している。
保険料以外では、免責金額設定の細分化や築年数に応じた免責金額の引き上げ、一定年数以上の原則新規契約不可などを行う会社もある。 東京海上日動は従来通りだが、保険料を改定しないわけではなさそうだ。
代理店の間では「来年4月ごろに保険料を改定する可能性は高い」と見られている。
10月の改定で最も影響を受けるのは長期5年契約で今期満期を迎える高経年の管理組合。5年前と比べ「保険料が8倍になる組合もある」(マンション保険バスターズの西澤健之最高経営責任者)。
値上げ後の金額は管理組合にとって想定を超えるケースが多いため、満期のお知らせを前倒しする形で対応している。「9月末までに長期5年契約を契約し直す、他社に乗り換える、保険内容を削るなど、選択肢はいろいろあるが、検討できる時間は限られている。管理組合は早目に検討を開始して欲しい」(セゾン保険サービスの岩崎氏)と指摘する。
新しい選択肢として登場するのは日新火災の「マンションドクター火災保険」。7月発売開始となった新商品で、一般社団法人日本マンション管理士会連合会(以下、日管連)がマンションの管理状況を診断し、診断結果が保険料に反映される。
現地に派遣されたマンション管理士は14項目について加点方式で評価するが、全項目で最高得点の場合、大幅な値引きとなる。
都内管理会社の保険担当者は「給排水管項目では最高得点がステンレス管だったり、総じて評価のハードルは高い。高経年マンションで全部満点は考えにくく、標準的なマンションであれば激安というわけではない」と指摘する。別の代理店は「保険商品選びは損害事故発生時の保険会社の対応なども考慮すべきなので、様子見したい」と話す。
現在、日管連には50件以上の診断申し込みがあり、「管理組合にとって適正な管理運営への動機付けになればありがたい」(村上民夫事務局長)と話している。
損保ジャパン日本興亜では63項目のチェックリストを作成し、保険の引き受け条件に活用し始めている。あいおいニッセイ同和損保は「10月の時点では導入しないが管理内容と保険料を連動させる仕組みは検討している」(広報担当)としており、新たな潮流を予感させる。
「永遠のテーマかもしれないが、個人賠償特約について今一度議論してもよいのでは」とマンション保険バスターズの西澤氏は提案する。マンション保険での請求金額最多は個人賠償事故のため、個人賠償は最重要の特約であると同時に、保険料値上げの一大要因にもなっている。個人賠償を個人加入にすると加入漏れの恐れがある。
西澤氏によると福岡県のマンションで、保険料値上がりのため「理事会が管理費の値上げか個人賠償の特約を外すか賛否両論となり、膠着状態となった」と話す。
打開策として同社では戸当たり年間2000円の委託料で、個人単位の加入に対応する一括管理の仕組みを考案。代理店が全戸の補償状況を管理し、満期案内も行い、補償不要とする人には管理組合に漏水時賠償の覚書を提出してもらう。
大手管理会社の保険担当者は「保険料高騰で管理費の値上げが必要というほどの管理組合はまだ少ない。外すと加入漏れまで手が回らない」と話す。管理費値上げの大きな要素になるほど保険料の高騰が続く場合、代理店も新たな仕組みを考えておく必要がありそうだ。
(マンション管理新聞:平成27年8月15・25付)