『1983年以前』に報告義務<東京都・検討会>~管理状況報告制度「1962年法」下の建設物件を軸に~
東京都は3月29日、マンションの適正管理促進に関する検討会(齊藤広子座長)の第1回会合を都庁で開いた。2018年度に創設予定の管理状況報告制度の方向性案が示され、課題や管理不全・不全兆候の判定などについて議論が交わされた。都が地元自治体と共同で16年度に実施した、同制度と基本情報登録制度の試行についての報告などもあった。
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案によれば、管理状況報告制度で義務付けられるのは、区分所有法が改正された1983年以前に建設されたマンション。都がおととし策定した「良質なマンションストックの形成促進計画」では対象として「旧耐震」「築40年以上」といった要件が例示されていたが、管理組合についての明確な規定がなかった旧法(1962年法)時代に建設されたマンションほど管理上の問題が多い、といった背景から、83年までに建設されたマンションを報告義務対象にした。報告義務から外れていても、管理不全の兆候があるマンションには報告を求める。
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「管理不全」かどうかは、ハード・ソフト面の状況から判断する。(下記に「管理不全」と判断する状況の例等)「管理不全の兆候」「管理不全」の定義については「維持・管理が適切に行われていない状態」、「維持・管理が適切に行われず、周辺にも悪影響を与えている状態」と、それぞれ例示された。報告内容は管理不全の兆候を判断するための情報とする。報告頻度については、数年ごとに定期的に行う。もしくは内容に変更があった際その都度報告を求める、などの考えが示された。当日委員からは、管理不全に陥ったマンションについて「リーダーの存在が必要。リーダーをつくっていくようなことまで踏み込まないと、立ち直らせるのは難しい」とする見解や、行政側が管理不全だと判断しても「管理不全と住民が思っていない場合もある」といった意見が上がった。会合は計6回を予定し、次回は5月14日。7月に中間まとめの素案を提示し、11月に最終まとめを行う。
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〚管理不全・管理不全兆候の考え方〛
【管理不全と判断する状況(例)】
<建物状況(ハード面)>
〇外壁が剥落し、隣家の通路に落下した。
〇エレベーターの点検をしておらず、目的階でドアが開かない可能性がある。
〇塔屋の高架水槽の劣化が激しく、水質検査もしていないため、居住者は購入した水を使用している。
〇強風時に屋上に野ざらし状態のアンテナの落下が懸念される。
〇外壁がツタで覆われており、ムカデが発生している。
<管理運営状況(ソフト面)>
〇共用部分の電気料金の滞納が発生し、電気供給の停止通告を受けている。
〇長期修繕計画がなく、不具合は各区分所有者が自己負担で、自分の関係のある箇所のみ修繕している。
〇清掃が十分されず、居住者の私物放置、たばこの吸い殻散乱、異臭発生など不衛生である。
〇敷地内に不法投棄と思われる家具や家電製品等のごみ、郵便ポスト周りにチラシ等が散乱している。
【定義(例)】
〇管理不全:維持・管理や修繕が適切に行われず、周辺にも悪影響を与えている状態。
〇管理不全の兆候:維持・管理が適切に行われていない状態。
【管理不全の兆候と判断する事項(例)】
次のいづれか一つ以上がない。
①管理組合、②管理規約、③総会開催、④管理費、⑤修繕積立金、⑥大規模修繕の実施
*以上検討会資料からの抜粋
(マンション管理新聞:平成30年4月5日付)