『ヤミ民泊』に差し止め命令・8/9東京地裁~管理規約違反認定-規約改正『特別の影響』に当たらず~
いわゆる「ヤミ民泊」が行われているとして、東京都内の管理組合が区分所有者に対し営業の差し止めを求めた訴訟の判決が8月9日、東京地裁であった。浦上薫史裁判官は管理規約に基づく差し止めを認める一方、弁護士費用97万2000円の氏H来を命じる判決を言い渡した。区分所有者が控訴しているかどうかは不明。
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判決によれば、訴えを起こしたのは東京都港区の管理組合。昨年5月、民泊の営業差し止めと弁護士費用147万円の支払いを求めて東京地裁に提訴した。
民泊が発覚したのはおととし1月ごろ。区分所有者が「Airbnb」のホームページで宿泊利用者を募っていた。管理組合はこの年の4月に管理規約を改正。以前から事務所としての使用は認めていたが、専有部分の用途を定めた条文に民泊を事実上禁止する規定を付加。居室を第三者に貸与する場合の、第三者への規約・使用規則の順守義務を定めた条文を新設した。
提訴直前の5月には、規約違反に基づき提訴する場合の弁護士費用・差し止め費用の請求について定めた規定を新設する対応を施している。
差し止め訴訟は、管理規約違反と区分所有法違反の2本立てで行った。
管理組合側は①民泊により素性の不明な不特性多数の外国人が頻繁に出入りするようになった➁夜間大声で話していてうるさいと苦情があった③ごみを分別せずまとめてゴミ置き場に捨てた④オートロックシステムにもかかわらず民泊で不特定多数が出入りするようになったーといった点を問題視。これらの行為から、民泊は「共同の利益に反する行為」だと指摘し、区分所有法57条1項に基づく差し止めも求めた。区分所有者側は、民泊を禁じるなどの管理規約の改正は「区分所有法31条の『特別の影響』に該当し」、当該区分所有者の承諾が必要だと訴えた。
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浦上裁判長はまず、当該居室では「不特定多数の者を対象として、その専有部分を宿泊や滞在の用に供し、または短期間の貸与をしていたと認められる」とし、「民泊」が行われていた、と指摘。区分所有者の行為は「管理規約に違反する」と認定した。
また「民泊を否認するのみで、居室をどのように使用しているかについて明らかにしようとしない」と述べ、法廷における区分所有者側の姿勢を批判。民泊が発覚した際、管理組合に「今後は行わない」と述べておきながら、その後も民泊を募集していた点も併せて「被告は、今後も管理規約に違反して不特定多数の者に対して居室を短期間の宿泊や滞在の用に供する可能性が高い」と結論付け、差し止めを認めた。
管理組合が主張した、民泊による騒音などの迷惑行為が「共同の利益に反する行為」に該当するするかどうかについての言及はなく、認められた差し止めは、管理規約違反を根拠としたものだ。
区分所有者が主張した「特別の影響」については、管理組合の改正が「マンションの居室を民泊または短期間の賃貸借に供することを禁止する規定であって、被告の権利に特別の影響を及ぼすものではない」とし、「被告の承諾は不要」だと結論付けた。
弁護士費用は、着手金32万4000円全額を認定。報酬については98万円の請求に対し「報酬は協議して決定するとされており、その額は64万8000円を超えるとは言えない」とし、計97万2000円と年5%の遅延損害金の支払いを命じた。弁護士費用の支払いについては仮執行お認めている。
(マンション管理新聞:平成30年8月25日付)