「マンションの終末期を考える『長寿命化・その先』」(コミ研6/27フォーラム)~建物だけではない。管理組合にも「終わり」が!タブー視せず問題点整理を~
マンションコミュニティ研究会(廣田信子代表)は6月27日、東京・月島の月島区民会館で第19回フォーラムを開いた。今回のテーマは「マンションの終末期を考える」。参加者は定員の100人を超え、「マンションの終活」に対する関心の高さがうかがえた。 ◆
当日は明海大学の小杉准教授による「マンションにはどんな終わり方があるのか」、スペース・ユニオン代表の藤木亮介一級建築士による「終末期を定めた上で長期修繕計画を考えることの意味」、などの講演があった。
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小杉准教授はまず、「マンションの長寿命化」は、一般的に「建物の長寿命化」と認識されているが「管理組合の長寿命化も含まれている」、と指摘。マンションの「終わり」には、「建物の終わり」と「管理組合の終わり」の二つがある、との見方を示した。その一方、この二つの「終わり」が「タイミングよく一緒に訪れるとは限らない」とも。
このため「建物の終わり」が来たときには建て替えを選択。「管理組合の終わり」が来たときには、管理不全状態に陥ることを防ぐ意味で、管理組合と建物を同時に終了させる手段である「土地・建物の売却」ができるよう、管理組合が「元気」なうちに準備しておく、といった、それぞれの終末期における活動例を挙げた。
スムーズな週末を迎える手法の一つとして小杉准教授は、建て替えや土地・建物の売却時期を数十年後に「仮終末」として設定し、「仮終末」までは健全な管理組合を確実に維持させる、「高経年期管理を」提案した。
仮終末までに建て替えや土地・建物売却等の事業準備や合意形成を進めておく。仮終末が近付いたとき、建て替えや売却の必要がなければ、仮終末の延長・再設定も可能だ、とした。 ◇
藤木氏は「現在の長期修繕計画はほとんどの場合『永遠にマンションが持続すること』が前提でマンションの終わりを見据えていない。終わりを見据えなくてよいのか」と問題提起を行った。
その上で、物理的・経済的にマンションが継続できなくなる「持続限界」と、「持続限界」が来る前に管理組合が自ら定めた適正なマンションの終わりを指す「持続限度」について、築50年前後の実在するマンションをモデルに検討した長計例を報告した。
このマンションは築80年を「持続限度」と想定、築78年で予定する6回目の大規模修繕は実施しないが、築80年までは修繕を放棄せず「維持」を続ける。
この場合、築68年以降は積立金の負担が大幅に減るが、藤木氏は「築80年時点での積立金残高を建て替えや建物解体費用に流用できる」点から、マンション継続の可能性も見据え積立金の金額を維持するのが安全な計画だとした。
藤木氏は将来の積立金額の変化を勘案し、25年を超える「超要期修繕計画」の作成を提案。同計画で全体を見通し、積立金の支出がピークを迎える年代に備え、事前に積み立てていくことが望ましいとした。「建物の生涯を把握するために『終わり』の設定は有効」と締めくくった。
(マンション管理新聞・2019年7月5日付発行)