給排水管の専有部分枝管の取替えも大規模修繕で実施したいのですが・・

投稿日:2014年05月26日 作成者:右田 順久 (6505 ヒット)
相談内容

私のマンションは入居34年を経て建物・設備ともかなり老朽化が進んでおります。
組合員(全75戸)も殆ど入れ替わりがなく、高齢者が大半を占めています。
今期理事会では、大規模修繕が2年先に予定されておりその検討の中で、最近は水漏れのトラブルも多いために、各戸の専有部分に属する給・排水管の枝管の更新も一緒に修繕積立金を使い実施する方向を含め検討を始めました。これに対して専有部分は自己責任で行うものだと考える組合員や既に自分で交換工事を済ませた組合員から公平性を欠くとの反対意見が出てくることも予想されます。
検討するにあたって、以下の点について具体的な留意点を教えて下さい。

①共用部分の管理を行う管理組合が、修繕積立金を使って各住戸の専有部分にある配管取替え工事も全額負担して実施することについての問題はないでしょうか。
(今の管理規約は、数年前に国交省の規約雛型に準じて見直した内容です)
②私としては漏水事故が一番心配ですので、多くの組合員の納得が得られるような他の方法などありましたら教えて下さい。

回答

高経年のマンションで漏水事故の発生を防止したいと考える管理組合の方にとって、最近増えてきている切実な問題です。組合員の賛同が得られ、資金に余裕がある場合には、大規模修繕と併せ、管理組合の責任と負担において一緒にやるのがよいのでしょうが、専有部分と共用部分の権利関係、修繕積立金の取り崩しにも絡むことになるため、組合員の意向を十分に汲みながら慎重に取り組み対応することが重要です。

実施検討に際しては、理事会が中心になり、組合員の意向を把握するためのアンケート、状況の説明会の開催などにより、組合員間での十分な合意形成を得ておき、大規模修繕工事の実施決議を経て、トラブルが起らないよう進める必要があります。

①修繕積立金を使って、大規模修繕で専有部分を取替えることについて
標準管理規約第21条第2項では、専有部分である設備のうち共用部分と構造上一 体となった部分の管理は、共用部分の管理と一体として行う必要がある場合には、管理組合がこれを行うことができると規定しており、総会の決議を得て、排水管の取り替え等に要する費用のうち、専有部分にかかるものについては、各区分所有者が実費に応じて負担すべきものとされています。
これは、修繕積立金は共用部分の管理に要する経費に充てる為に徴収しているものなので、その目的に沿って支出すべきものとされているからです。
殆どのマンションの管理規約の条文のままだと、専有部分にかかる枝管工事の費用を修繕積立金の取り崩しで充当することはできませんので、専用部分含め実施しようとする場合は、その根拠となる規約を変更(特別決議扱い)しておく必要があります。該当する条文として標準管理規約第21条(敷地及び共用部分等の管理)など追加変更すること(例:総会決議を経て、管理組合の責任と負担において)などにより、専有部分の枝管工事の為に修繕積立金を取り崩して行うことになります(第28条1項)。

②漏水事故の発生を回避も方法その他
管理組合が、専有部分の枝管と共用部分と同時期に工事できるように全体の企画を行いますが、費用の負担は本来の規約の趣旨に沿い各区分所有者が負担する方法が考えられます。しかし、そもそも組合員も資金捻出が困難な中の実施となること、専有部分の立ち入り拒否、など様々な理由で、全戸一斉に実施できないような場合を想定し、その対応をなどについても合意しておく必要があります。
管理組合が徴収した修繕積立金は、通常は組合員に還付されることはありませんが、既に自分で工事を実施した住戸と未実施の住戸が有る場合には、修繕積立金からの費用の支出についての公平性も考慮し、住民間でトラブルが起らないよう、お住まいのマンションの事情を考慮した対応策を講じておくことが前提となります。

補足コメント

給排水管の共用部分本管と専有部分枝管を一括して交換することは、殆どの組合員が漏水事故の防止の為の十分な合意が得られたうえでの実施ならば、私的自治の範囲で可能かと思いますが、反対者が多い場合や実施にあたっての障害がある場合には、管理組合としては実施にあたって慎重な判断と対応が求められます。
裁判での争いとなった場合には、規約変更の有効性を含め、様々な司法判断を待つことになります(現在、本件の事例に関連した最高裁の判例はまだありません)。

注:ここにご紹介しております相談事例につきましては、秘密保持義務(マンション管理適正化法第42条)遵守の関係から当事務所に寄せられた直接的内容のものではございません。

 


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