最近、一部改正された建替え円滑化法は、どこが、どのように変更になったのでしょうか?
- 相談内容
私は会社勤めですが、高齢の父と同居するため、駅から遠いながらも自然が豊かな中のマンションを3年前に購入、良い住民の方々にも恵まれて満足して居住しております。
今期は輪番で、私も初めて理事に選ばれ活動をしていますが、築40年を経過し、建物・設備が老朽化も進みつつあり、将来的なことですが、今の理事の間でも建替えがよい、いや修繕しながら可能な限り住み続けるのがよい、など考えもマチマチのようです。
そんな中、昨年末に改正建替え法が施行され、敷地売却制度や容積率緩和特例が創設されたので、建替えを進める際、従来よりやり易くなりそうだ、との話を聞きました。
しかしながら、私自身、そもそも建替えがどのようなものかよく分かっておりません。
そこで、①建替えとは?、建替え円滑化法とはどういう法律なのか、②今回なぜ建替え円滑化法が改正されたのか、③そのポイント概要について、各3点について教えていただければ有り難いです。- 回答
①建替えとは?、建替え円滑法とはどういう法律なのか。
・現に有る区分所有建物を取り壊して、新たに区分所有建物を建てることです。建物全部が滅失した場合は、区分所有法の建替えの規定は適用されません。(“被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法”によることとなります)。
・建替えを実施するためには、集会において区分所有者及び議決権」の各4/5以上の多数で、建物を取り壊し、かつ当該建物の敷地もしくはその一部の土地またはそれらを含む土地に新たな建物を建築する旨の決議をすることができます(区分所有法第62条1項)。
・建替え決議により、実際に建て替えを行うことになった場合には、マンション建替組合を設立し、権利変換手続きにより実施することになりますが、これらを円滑に行う為、具体的に規定された法律が、“マンション建替え円滑化法”(平成14年に制定)なのです。
・平成14年改正の区分所有法以前には「老朽、損傷、一部の滅失その他の事由により、建物の価格その他の事情に照らし建物がその効用を維持し、または回復するのに過分の費用を要するに至った」ことが建替えの客観的な要件とされていましたが、この要件がかえって紛争の原因になるとの指摘を受けて、改正よりこの客観的要件は削除されました。また建替え前後の建物の主たる使用目的が同一でなければならないという要件も削除されたので、現在は建替え前の建物と使用目的を全く異にする建物を建てることが可能です。
建替え円滑化法は、マンションを建替えるとき、建替えを計画するときに関係する法律で、建替えを円滑に進めるための様々な手続きや方法が定められて定めています。また賛成する区分所有者からなる建替える為の団体(建替え組合)が建て替えを進める為の定めなどが定められています。
② 今回なぜ今回、建替え円滑化法が改正されたのか。
・その狙いについては、「地震に対する安全性が確保されていないマンションの建替え等の円滑化を図るため、マンション及びその敷地の売却を多数決により行うことを可能とする制度を創設する等の所要の措置を講じること」とされています。
(高経年マンションの中でも、耐震性不足のマンションの解消の促進を重視)
・その目的・背景として、「南海トラフ巨大地震や首都直下地震等の巨大地震発生の恐れがある中、生命・身体の保護の観点から、耐震性不足の老朽化マンションの建て替えが喫緊の課題」(建替え法改正パンフ(26年12月発行:国土交通省住宅局より)
・現在のマンションストック総数約590万戸のうち、旧耐震基準に基づき建設されたものは約106万戸、一方、マンション建替えの実績は累計で、183件、約14,000戸(H25年4月時点)。要は危険居住解消の促進が改正の狙いです。
③ そのポイント2点の概要について
・マンション敷地売却制度の創設
区分所有者の集会(総会)における4/5以上の賛成で、マンションとその敷地が
売却できること。(これまでは全員の同意が必要でした)
買受計画の認定(都道府県知事又は市長が認可)、買受人デベロッパー等)がマンションを除却など、マンション・敷地の売却の流れが規定されていますが複雑です。
・容積率の緩和特例の創設
除却の必要性に係る認定(耐震性不足の認定)を受けたマンションの建替えにより新たに建設されるマンションで、一定の敷地面積を有し、市街地環境の整備・改善に資するものについて、特定行政庁(いわゆる建築主事がいる役所)が許可した場合には、容積率が緩和されます。周囲環境に配慮して建替えることになり、
・容積率の緩和特例の創設
*区分所有法の建替え、旧建替え円滑化法の規定を知らないと少し難しいですが・・・。
上記いずれも耐震性不足のマンションのみ(特定行政庁許可)適用となります。
*従来通り、4/5以上の賛成で、管理組合が主体となって建替えもできます。以上のことから、従来より一概に建替えがし易くなったとはいえません。
- 補足コメント
・法改正が施行されたばかりであり、また買受人(デベロッパ等)の関与についても立地条件等によると思われます。今後の動向・進捗に注目していくことが必要です。
・マンションの高経年化への対応への合意形成は(耐震性不足の問題とは別でも)、各組合員の意向・事情(例えば少子高齢化等)が異なり、困難が伴います。
管理組合は、組合員の意向を配慮し、時間をかけて慎重に進めることが大切です。
注:ここにご紹介しております相談事例につきましては、秘密保持義務(マンション管理適正化法第42条)遵守の関係から当事務所に寄せられた直接的内容のものではございません。